U-15 DL-1000Aと AU-S1& EQA

 四月中旬、アナログ2系統のうち、ハイインピー・ハイコンカートをセットしていたプレーヤーPD-300のスピードコントロールが不能となりました。原因は水晶発振器、PD-310で経験した故障と同じです。1980年製造で未だにバキュームが効くという優れもの、今回もきっと不死鳥のように蘇ることでしょう……。

 修理の間、残ったのはPD-310プレーヤーと適用範囲の広いトーンアームSAEC WE-407/23です。ortofonのローインピー系と国産ハイインピー系カートをこれで共用しようと 、トランスとEQAをつなぎ替え、相互の相性を探ってみました。AUDIOCRAFT PE-500MM/MC内蔵トランスは、素性としてはローインピーカートリッジに適するようで、MC-30Sでは溌剌としますが、DL-305やMC-A6のようなハイインピーカートでは分解が甘くなり、少々活気が低下気味です。

 当初、手持ち8個のカートをあれこれと繋いでみましたが、その都度ゼロバランスと印加調整が面倒で、やがて、AUDIOCRAFT PE-500と相性の良いortofon 系だけで間に合わせることにしました。彩り豊かな響きが重なり、愉しく音楽を再生するMC-30Sと、帯域をもう一つ拡げて欲しいが、にじみなくすかっとした音を奏でるMC-20S。曲によって使い分けて不自由はしませんが、やはり少しばかり物足りないものです。

 そうこうするうち、旧知のLUXMANサービスの方から連絡が入り、秋葉原で部品を手配中だが、調達にはもう少し時間が掛かるとのこと、もしかして……という不安が生じました。オークションで後継機を探ろうか、同じL UXにしようか、それとも……。覗いてるうちに、DENONのトランスAU-S1を落札してしまった?!

 カートリッジは組み合わせるトランスとEQAによって、予想以上に豹変することを知り、色々組み合わせて相性を探ってみたい欲求が高まっていました。オークションを覗くと、そこには実に快い音がしそうな機器が必ずあって、目をつぶって行き過ぎようとしているのに、私の手元に来たいって呼びかけるんです!

 DENON系と、その血筋を引くカートが増えたので、ここらで一度メーカー純正トランスで鳴らしてみたいことと、特に、DL-1000Aの真の実力はどうなのか確認したいという興味もありました。DL-1000Aには、AU-1000という純正トランスがありますが、オークションでもあまり見かけません。美しげな音が出そうな外観の、現行最上位機がAU-S1です。

 まず、AU-S1をAUDIO CRAFT PE-500MM/MCの MM端子で受けて両者の相性をみました。最初に、
HYPHONIC MC-A6を1g印加で音出し。結果は、目鼻立ちクッキリシャキリ系、まるでCDライクに鳴ります。うーん、誠に現代的な音です。MICRO MT-500とMusikfest AE506MMで再生する表情よりかなり若返った音のように感じます。低域への再生帯域が広いためか、かなり暗騒音を拾います。もしかすると例のテラーク盤のテストで、カンチレバーのダンパーが……? しかし、このニュアンスは求める音のイメージと違います。

 次に本命、DL-1000A!これは、嵌った!ヴィバルディの四季を聴き、高橋真梨子のTriadを聴いてすっかりご機嫌になりました。DL-1000Aは、スラスラと流れてどこか喰いたりなさを感じたのが、メリハリと起伏がついて、しかも歪みのない美音です。極めて軽量な振動系、空芯コイルから生まれる歪み感のない音。好みの陰影感と最低域の描写が僅かにもの足りませんが、そのまま4日間、いろいろなジャンルを聞きました……。

 5日目の今日、DL-1000AとAU-S1、そしてMu sikfest AE506MMの初顔合わせ。これは見事です!軽やかに、時に深々と、流れるようにきらめくように舞う、ヴィバルディの四季!高いSNによって、空間感を伴って再生されます。中島みゆきの『雪』、これも陰影が豊かに出ます。

 しかし、実は1台のプレーヤーであちこちつなぎ替える本日の試聴で、先ほどの音と、いま出ている音、本当にこんな差があるのか疑問です?

 言えることは、かなり神経質と思えるほど分解能高くセンシティブなMusikfest AE506MMは、どうやらDL-1000Aの歪みのなさ、高いSNと輪郭を際だたせるAU-S1と組み合わせてベストマッチ。3者が絶妙のハーモニーを醸すようです。もう一押し、低域の腰が下がればほぼ完璧です。

09th. May'07