試聴会の興味は、使用機材の支配力とか現代オーディオレベルの見極め。さらに、B&W SPはネーミングもDIAMOND振動板が売りですが、国産オーディオ黄金期VICTOR SX900 Spiritで実施済みの技術。高度な分解能とモニター系とは異なる快い音楽性、それから20年後の技術進歩は興味あるところ。
1.VANDENHUL VHD-MC10(推定)+VIP PL+Esoteric E-03
VHD-MC10カートリッジの癖なのか、トランジェントは良いが鋭いピークが感じられます。これとよく似た表現の、BENZ MICRO GLIDER-SLを最近まで使用して、いろいろ手を加えても好みにあいません。現代カートリッジは、アナログ最盛期とは別方向に進化しているようです。
VIP PLについては、トーンアーム構造がAUDIOCRAFTのワンポイントサポート方式と共通のアプローチかとも思われますが、現代的潮流としてCDライクな鋭角的表現となっていると感じます。Esotericは一部の先鋭的表現を追うあまり、いまいち音楽性に欠ける印象があります。
LPの歪みとCDライクな鋭角的表現とは、自分のアナログイメージと異なります。耳の保養とならず突き刺さる音が苦痛で、左右SPが正対して向けられた佳い指定席を離れ、後方席に移りました。
2.Ortofon MC-30W+LUXMAN PD-171+E-200
選曲は自分の好みとあって楽しめ、低域がやや薄く腰高傾向ですが音質としての素性は良いと感じました。この前モデルMC-30Sを使用していますが、ほぼ同じ柔らかさと響きの良さがあり、MC-20Sより音数は多くシンフォニックな感じです。WモデルはEQAの性格も加わってか、少し高域寄りかもしれません。
残念な点は、EQAの力不足と推定される音の厚み(肉声感)不足を感じましたが、これはLUXMANの現行モデルですからやむを得ません。この傾向はAccuphaseアンプのクールで強い駆動力(色づけがない点で器楽系ジャンルで高い評価)にも影響されていたように感じました。
LUXMAN末吉氏と会話でもEQAの力不足は認めているか、同氏も同じPD-350 PLを所有しているそうで、今作れば100万までは行かずとも近いあたりだろうと、これがLPオーディオの黄金期だったのでしょう。
3.Jan allaerts+Dr.Ferickert Analoge(Woodpecker)+Burmester
すべての機器と初対面ですが、一曲で聴くのをやめました。重く鈍重な音に感じられ、組み合わせの意味が理解できないと云うか、私の好みの対局にある音響。ブルックナーを沈思黙考して聴きたい方にお奨めか。オーディオは好みの世界ですから、何より低域を重視する方、ボンゴ車をボンゴボンゴと揺らせながらカーオーディオに浸っているユーザー向け。
一日目の参加途中で見切った試聴会は、各社の組み合わせ使用機材にレベル差がありすぎて比較試聴会としては片手落ちか。価格として 10倍ほど差があっても、しかし再生音にそれが反映しない再生術。加えて、B&W SPと Accuアンプの支配力がPLの支配力を遙かに上回った印象です。
まさにLPの泥沼に踏み込みつつあるS氏は翌日も参加。届いたメールでは期待を裏切られた様子。何よりロックのライブと等しい音量で歪みとピークに満ちたLP再生は、アナログの快さの何を伝えたいのか、苦痛と忍耐を求めるだけ? あるいは機器を準備し、LP音響へと聴衆を誘うConductorの力量不足かもしれません。
04th.Dec.'11
LP再生音に惹かれまして……と、遠方から月1ペースで来訪されるS氏に誘われ、アナログ試聴会に参加。現代第一級のスピーカーB&W DIAMONDと、現代の先端プレーヤーから再生されるアナログ音響や如何と、愉しみ?
生憎、日中も氷点下の例年にない寒気で、40〜50帖ほどの試聴室の温度は夕刻からぐんぐん下がり気味。気管支に不安のある体には大敵、再生される音響が好みとかけ離れていたこともあって試聴会後半で、途中退席。
以下、カートリッジをC、プレーヤーをPL、フォノイコライザーアンプをEQA、スピーカーをSPと略してコメント。