U-18 kontrpunkt bでツィゴイネルワイゼン

 久々の更新 ^_^; 今回のテーマは最近導入したortofon kontrpunkt b と周辺細工。
一度聴いてみたいと思っていたKontrapunkt-bが地元から出品されたが、画像でカンチレバーが正中から僅かずれるようにも見える。落札後に問い合わせ、拙宅に試聴条件はあるが、とお誘いしたら出品のT氏も賛同、手渡し取り引きとなった。最寄り駅まで迎えに出たら30代と見えるT青年、出品物は祖父の愛用品だったとの由、現状判断できず試聴は大いに興味あるとのこと。当方の試聴テーマは、現在のリファレンスはハイインピータイプがDL-1000A、ローインピーとしてはLUX LMC-1で、同ラインでこれを超える標準となるか?

 カンチレバーの位置ずれは見方によって? と感じる程の許容範囲。ドリンクと菓子をつまみながら6時間ほどの試聴となった。比較対象はLMC-1としたいが、K ontra-bはスタイラスカバー欠品で、同じローインピー系の付け替え試聴はリスクが高い。そこで、別アームのDL-1000 Aと比較した。3プレーヤーの残りには参考対象として、針圧とコイル巻芯が類似のDL-103GLをセットした。

 試聴中、空芯タイプと鉄芯型の再生音に関してT氏から鋭く的確なレスポンスがあって、耳が良い方と思ったら、ご自身弦楽器を演奏されるとのことで納得。しかし、既存の音イメージと違いが腑に落ちないか、テストレコードの森田童子のボーカルバックのピアノ再生を指して、
『これはピアノの音じゃないでしょ……、CDでもこんな音はない……。』
『トロリとして、まるでシロホンかガラスのような、とか?』
『そう、そういう楽器でしょ?』
『ではこれを聴いて下さい』と、CD盤Ashkenazy/CHOPIN Nocturnes.これは実にトロリとした甘い音がする。T氏、しばし聴き惚れて不思議そうに頷いている。 何でビアノがこんなの? と考えていらっしゃるか。

 こういう傾向の音は、導体の影響が強いかも知れません。音の艶とか、基音に乗るような快い響きは器機だけではでない。これは、使用しているアクロテック8N RCAケーブルが影響しているかも。独特の癖が、嵌まると抜けられない魅力だったりします。同じ8N銅でも、ortofonは清楚な美感があります。このシステムのチューンでは、導体に凝っています。

 評価は、分解能、再生バランス、ほとんどの項目でDL-1000Aに軍配!Kontra-b は高域弦の再生で高評価だが、低域の緩みと輪郭の甘さが致命的か。しかし、歪みのない点はDL-1000Aとの差も僅少。DL-103GLは、くっきり芯のあるバランス良い音は捨てがたい。
 
 この評価は最終結果ではない。比較対象のDL-1000Aは8NフォノケーブルTSW1000で透明感と滑らかさ、AU-1000トランスでキリッとした鋭角と、リード線は6N高純度銀でチューンしているが、これらパーツを詰めるほどに反応する潜在能力に驚く。Kontra-b 付属のリード線は低純度銀メッキ線か、まだ改善の余地がありそうな感じがする。輪郭の曖昧さをどこまで矯めて潜在力を引き出せるか、それともこれが実力限界か?弄ってみたいが、ortofonは止めネジ規格が1/10インチ(2.5mm)で、しかも本体にネジ山が切られていて、ヘッドシェルやネジが限定される。

 フォーカスの曖昧さを締めるにはSAEC ULS-3Xが良さそうだが、双方に規格違いのネジ山が切られて不可能。リード線交換は、スタイラスカバーレスのリスクが怖く、そこでプラスチック板で針カバーをいくつか試作した。Kontra-bには両側から抑えバネがないとぽとりと落ちる。最終的に45年前に使用したFR-1 MkUのカバーに似た形として実用本位、試着テストも完了。少しガタのあるフィンガーフックはビスをアロンαで強化固定、馴染んだSuper Kite風にして熱収縮チューブダンプ。

 さて、リード線をSeiren Excellentに交換。レコードはPEGGY LEE/I'M A WOMAN 。DL-1000Aは広帯域と透明感、あっけないほど清楚で癖のないキリっとした表現。PEGGY LEE は絹のドレス姿で、貴賓客を前にして歌う。Kontra-bのリード線.はエージング不足だが、ぐっと砕けてキャバレーのステージで歌う雰囲気。低域の図太さが目立つが、明瞭感と音数は増し、独特のエコー感が愉しい雰囲気。両者、再生表現の違いを代表する好対照か。

 翌日、Kontra-bが高域弦の再生に優れるので、エリックフリードマン/ツィゴイネルワイゼンを聴いた。高出力がヴァイオリンのほとばしる音の再生に適すのか、言い尽くされた陳腐な表現だが松ヤニが飛び散るような音で、ジプシー達の狂喜乱舞する様が醸し出される。ふと、五嶋みどりのタングルウッドの奇跡を連想した。すさまじい生気にあふれた演奏だったのだろう。

 更に3日後、低域がオーバーに感じられたので、コイル巻線と同質の6N銀線で専用リード線を作成した。これで万全。高純度銀線固有の透明感と凛とした艶が素晴らしく、不満のないリファレンスが完成しました。
                                                       1st. Feb.'13