T-01 オーディオ揺籃期の想い出‥‥

 1980年代、愛用したのはDENON(デンオン)で、PMA970は CR形の無帰還リアル・タイム・イコライザーアンプを搭載してアナログ再生に優れ、中島みゆきのささやくような声がとてもリアルでした。音色は、かつてのチューブアンプのような優しさがありました。転勤族のため、複数の機器を所有することはできずアキュフェーズ購入時に下取りに出しました。良い音でした。

 現在のコンポの多くが4〜5代目、かなりの年月を経ていますが、音には結構満足しています。オーディオの栄枯盛衰史と自分史を重ねて、喜びと失敗の思い出を紹介します。

                          04th.Dec.'04
                                  
 オーディオといわれる記憶を辿ると、かつてはステレオといい、さらに遡ると物心ついた頃、1950年代には縦型の木箱のような旧いラジオ。中央に円形ダイヤルチューニングがあって、中を覗くと真空管のフィラメントが赤く輝いてきれいでした。それと、蛇が鎌首を持ち上げたようなトーンアームの先に鉄針を取り付けて聴く、蓄音機でした。

 最初に自分のセットを手にしたのは1964年、ビクターの真空管式卓上型でした。当時はオーディオ黎明期で、家電メーカーはこぞって音響機器をシリーズとして発売していました。「アンサンブル型」は、プレーヤーとアンプおよび左右スピカー一体ボディに四本脚、少し経つとこれらのパートが分かれて、「三点ステレオ」となり、上級カテゴリーとして「コンポーネント・タイプ」なる単体製品が現れました。

 60年代半ばまで、アンプはチューナー一体型の「レシーバー」が主流でしたが、やがてアンプは独立して「プリメイン型」が全盛となります。各社の製品を組み合わせることができるようになったコンポーネントタイプでは、トリオ、サンスイ、パイオニアが御三家、高級路線のソニーはトランジスターを使用した音響製品の先駆けでした。

 音響用増幅素子が、チューブからトランジスターに移行し始めたのもこの頃でした。主流の真空管に対して、「ソリッドステート・ステレオ」なんて称されました。耐久性と信頼度で将来はこれが主流になるだろうと言われ、先駆者ソニーはトランジスターラジオで世界的メーカーに成長していました。

 トリオのソリッドステートアンプは垂涎の的で、柔らかく焦点の甘いチューブの音と好対照な、分解能の高いきらびやかな音はこれぞハイファイと感じたものです。しかし、実際のところ、真空管の使いこなしは既に到達点に達していましたが、一般家電メーカーが販売するトランジスター音響機器の評価としては、やっぱり石の音は石だといわれました。その中で、ソニーの甘い音、トリオの高い分解能と歯切れよさ、どちらもトランジスターを使いこなした先駆メーカーです。

 1968年、トリオから画期的なプリメインアンプKA6000がでました。同年職を得て、現実に入手できるようになって、そのボリューム感と佇まいの美しさにすっかり魅せられ、コンポを組みました。KA6000アンプと同社のベルトアイドラードライブPC-400プレーヤー、これをスタックスのイヤースピーカーに繋いで、初年度のボーナスではここまで。でパイオニアのブックシェルフSP、ティアックのオープンリールデッキ等、2年ほどかかって組み終えた時の感激は忘れられません。ピアノ曲がとてもリアルでした。

 トリオKA6000はいつか撮影したような記憶があり、探してみました。初代セットが写っている唯一の写真は、75年、満2歳の誕生日を過ぎたばかりの長女を写したものでした。当時はカメラも趣味の一つで、もっぱら娘たちを写すのが目的で、自分でモノクロ現像・引伸ばしをやってました。なつかしいセットに再会しました。

 トリオは、自分のオーディオにとって原点です。1960年代半ば、FM放送かAMでしたか定かではありませんが、深夜帯にかかる頃の放送でトリオ・ハイファイ・クロペディアがありました。三橋達也さんがディスクジョッキー、なんと訳すのでしょうか造語かもしれません。「ハイファイの種を売り歩くトリオ」か?青春時代、深夜のディスクジョッキーの語りと音楽を聴きながら勉強したというおぼろげな記憶がありますが、何かの折にそのテーマ音楽を聞くと、妙に懐かしいものです。JAL提供のジェットストリームなんかも長く続いてます。そんなことで、トリオというブランドが刷り込まれていたのかもしれません。