T-03 クラシックでα波がいっぱい

 私がオーディオに求めるのは快さですが、これは自然回帰なのかも知れません。

 快い音、たとえば、波の音、風の音、森の音、小川のせせらぎ、小鳥のさえずり……、心安らぐ音には、音楽と同じく耳を傾けます。一口に音楽といっても、ジャンルによって好き嫌いがあります。ロックは、ビートルズ時代〜サイモン&ガーファンクルともなると、じっくり聞きます。ジャズは心にしみるのと、騒々しく感じるのとに分かれます。

 最近は雑多な音楽を聴きます。オペラ、リート、シャンソン、カンツォーネ、ファド、フォルクローレ、歌謡曲、民謡、ニューミュージック、どれも国民性と世代を反映しているのでしょうが、何か心に訴えるもの、言葉はわからなくとも、その声とメロディーから何かが伝わってくるものが好きです。歌い手の声質と歌唱力、それから聞き手に伝わる言葉の重さと、伝えたいメッセージの中身次第です。デビュー以来、中島みゆきのファンです。

 現代クラシックの中には、何を訴えようとしたものか、不協和音の連続には首を傾げたくなる曲もありますが、大部分は時代と文明の精華遺産として時を超えて残るのでしょう。ラップはあまりにも音楽としての要素が欠けています。音楽は、時代と世代とを反映するような気がします。今の時代の青春は、メロディーも詩もなく単調なリズムと日常語の範囲でしか語れないほど貧しいのかもしれません。歌には歌心が、言葉には言霊があります。

 ある科学博覧会のこと、勤務先も出展して私も説明者として狩り出され、たまたま隣のVictorのブースでは若いマネキン女性が、リラックス状態では脳波中のα波が増加するという実演をやっていました。客が途絶えた折、私も被験者として機器につながれました。

「心を静め、できるだけリラックスしてください。その程度がα波のでかたでわかります。」 目を閉じると、ふとシューベルトの未完成交響曲が浮かんだので、そのメロディーを追い続けました……。

 数分の時間が経って、声をかけられました。
「あなたは、何をやっている方なのですか?今何を考えていたのですか?」驚いた風に問われて、示されたグラフ上には高い水準のα波の連続が記されていました。

「ただのサラリーマンですが。今、音楽のメロディーラインを追っていただけなんだけど……。」
「ふぅーん……、こんなことないですよ。」マネキンさん、ちょっと納得がいかない風でグラフを眺めていました。

 α波がリラックス状態で現れる脳波だとすれば、自然の音に耳を傾け、快い音楽を聞く時、間違いなく心が静まります。いらいらするとき、最も良薬としてレコードをかけます。それもAD。ゆっくりと、黒い盤面を清拭し、カートリッジの針を最外周の音溝に落とす……。針が落ちるとぷつんと音がでて、ボリウムをあげて椅子に戻る頃には演奏が始まっている。

 疲れた夕刻の場合、5分以内に眠りに陥ち入ることが多く、1時間ほどで目覚めたときにも、プレーヤーは音もなく回り続けている。最悪のケースでは、一晩中廻り続けている。だからカートリッジの寿命も短い。最初がトリオのMMタイプから始まって、FR-1MK2は交換グレードアップでMK3、SATIN M-21とYAMAHA MC7、MC3が針交換1〜2回、MC-1000が交換2回、現用3個目、audiotechnica AT33VTG等使用しています。

 α波試験を体験した当時の装置は、ADプレーヤーがバキュームタイプでLUX PD300+SAEC WE407/23、最もお気に入りのカートリッジがYAMAHA MC1000、MICROのトランスを介して、高効率A級DENON PMA970アンプにつなぎ、スピーカーはVictor FX-9。AD時代最後の良いシステムでした。
         23th,Dec.'04

 2011年12月現在、HPを全面的にリフレッシュすべく加筆していますが、システム全体は変わらないのですが、カートリッジだけは遍歴を重ねました。アナログ最盛期の名品たち30ほどか、断線したり破損したり、音質が好みと違って放出したりと、次第に数を減らしています。

 日常よく使用するお気に入りは、Ortofon MC-30S、DENON DL-1000A、DL-305、AUDIOCRAFT AC-01、LUXMAN LMC-1、YAMAHA MC-1000等、pp の繊細な響きから ff までのディテールを、明瞭さと歪みのないシンフォニックな音響で表現するタイプです。

                07th, Dec.'2011