T-07 復活…アナログ時代の香り 

  漆黒のgrooveに針を落とし……、芳醇なる音の香りに酔いしれる世界がアナログオーディオ……かな?
極性で変化し、アームケーブルの長さで音が変わるアナログオーディオの世界に、眠り込んで空回りが厭だからあれこれ対策しよう等という発想は、ぐうたらニーズそのもの。アナログとは、音が出るまでのあの面倒なプロセス……。全く、これこそ神聖なるアナログオーディオの儀式ではありませんか……。

 これまでYAMAHA MC-1000にあわせてハイインピー受けだったトランス接続をロー受けに変えて、ortofon カートリッジでヒアリングしました。MC-30S試聴では、音の響きが生き生きとして音楽性が豊かに感じられ、6時間ほどご機嫌でぶっ通しヒアリングとなりました。逆にYAMAHA MC1000が、意外なほどおとなしく、ごく当たり前のカートリッジに変身してしまいました。やはり特性に合わせたセットが良いようです。


 さて、PD-300の方は、2か月かけてたった1個の回転系制御 ICの新品在庫を探し出してくれました。しかし、どうも故障は回転制御の水晶発振器が原因らしいと……。これまた入手にいつまで掛かるか分からないとのこと。「駄目かもしれませんよ」と、またまた念押し ^_^;


  その気持ちよく理解できます。何しろ、今回補修なったVS300電源部(写真右側)バキュームポンプの修復だけで2日間を費やしたそうです。情にほだされる技術者なのでしょうか、職人魂というのでしょうか、これほどまでに真剣に修復にあたってくださる方は稀です。

  使い捨ての時代、20年昔の機器が復活するのは、今やアナログオーディオの世界だけです。 物資の乏しかった時代、人々は靴下の穴を繕い、膝小僧にパッチをあて、そんな時代をふと思い出します。♪〜母さんが夜なべをして、手袋編んでくれた……、アナログにはそんな時代の香りが残っています。
20th Nov.'05

 PD-300の回転コントロール不能と補修の見通しも立たず、ついに部品取りか、あわよくば後継機をと、オークションでPD-310を落札しました。サービスセンターに持ち込んで診断を乞うと、機能的には生き返りそうとの診断で、早速メンテをお願いしました。

 10日ほどで完了しましたが、ジャンク扱いですから外観はひどい。才色兼備が理想ですが、オーディオ機器の高騰時代、20年も経って復活したのですから文句は言えません。美化作戦開始。 ターンテーブルは超微粒子コンパウンドで半日がかり磨き上げ、アルコールで丹念にふき取り。疵だらけの木部は電源部品VS300で隠したり、入院中のPD-300から外してきたSAECトーンアームを取り付け、何とか化粧とセットを終えました。

 外観はご覧の通りです。磨き上げたターンテーブルがつややかに輝くと、結構見られます。しかし、ボディ木質部はいただけません。あちこち打ち身、擦り傷だらけです。画像下段は半年後の姿、再塗装とワックス磨きで見違えるようになりました。何事も愛情込めて、手塩にかけることです。

 余談になりますが、マニュアル式プレヤーですから、居眠りして回し放しになることもあって、 audio technica AT6006aオートリフターをセットしたことがあります。結果は数枚のレコードに修復不可能な疵を付けただけ。リフターのセンサー(アームが最内周無限軌道に進入する側圧を感知するメカの初動感度がアームの感度より低くて、リフトする前にアームをはじき飛ばす!

 疵ついたレコードを悔やみながら、腹立たしい思いでリフターを投げ捨てました。今なら電子センサーだって可能でしょうが、極めて微弱な信号を扱うカートリッジの近くに設置するリスクは避けたい。アナログカートリッジの至高の味とニュアンスを味わうためのリスクと考えるべきでしょう。

 光センサーや磁気センサー利用技術は既にあって、音質に影響しないオートリフトアップは可能であるとしても、そのような妥協姿勢は許し難い(笑)。音は程々、軽薄短小ニーズに応える最近の電子技術……。便利さを追求したいならレコードプレーヤーに求めるべきではありません!エジソン以来の歴史のある技術を、ついこの間できたばかりのCDなんかと同列で考えてはいけません。