T-17 YAMAHA MC-1000との因縁

 今年、工房5周年の製品企画で試聴用カートリッジが底をつき、試聴の度に使い回しも屡々、しかも最終の詰め段階に入ったZeusを一度組み付けると外す気になれない。一方、オークション相場の高騰で入手もままならず、修理すべき機会が訪れました。ところが……。
『まずお預かりしましたレコード針は、ボロンパイプカンチレバーが中央付近で折損しております……』修理見積りの記述は、信じられないような事実!送付したのは先年折損した3本目、オリジナルのダイヤモンドコーティング・ベリリウムと信じていたが……、もしボロンパイプカンチレバーであるなら既に補修されていたと推定され、根元がBeで、その先をBo+Boで二度継ぎする事になる。そこで、しつこいようだが、と再度のカンチレバー材質確認を依頼した。

『ご質問いただきました件についてご回答いたします。まず、ボロンパイプカンチレバーについてですが、再度確認いたしましたところ間違いなくボロンでございました。……中略……ボロンカンチレバーでございましたので、改めて修理のキャンセルをご希望の場合は……以下略』 やむを得ず、針継ぎ失敗で基部が僅かに残ったのを送った。『折損して残っている部分、ボロンパイプの……』と、またもボロンと断定! 『これは新品購入で20年以上使用し……、カンチレバーはオリジナルのままベリリウム製に間違いなく、同じ判定基準ならば先に送った品も同じくベリリウム製であろうと……。』新品購入した1984年X月X日付け保証書と添付Spec画像コピーと、さらにベリリウムとボロンの違いは見分けできると、談義V-17頁のURLリンクを貼って返信。

 ボロンカンチレバーと判断した材質検査の判断と、認識不足を詫びる文章を添え、送料重複分を差し引いてMC-1000が戻ってきました。準備していた6 N Silverリード線新作 Zeus で取付。印加調整しようとして、スタイラスカバーを外した瞬間、『またか!』と冷や汗! ボディ分割部のボンド付け忘れか、カバーと一緒にボディ下部が離れました(画像2)。このスタイラスカバーはカートリッジ後方から外すのが常法で、幸運なことにカンチは外れたボディ下部の針孔をスルリと通り抜けて難を逃れました。おかげでネイキッドタイプの音と、内部観察が愉しめました (笑) Benz Micro Glider SLでネイキッドには慣れたものの、破損リスクも高いのでエポキシで補修。

 音質は、カンチレバーが僅かに長めになって、高域が柔らかく低域はいくらか弱まったようですが、余計な付帯音がなく滑らかで音楽性の低下は感じられません。ボロン+SASスタイラスって良い感じです。評価基準として、私は低域から高域まで音質に違和感のない一体感を重視し、このモデルはその点が優れます。一部の表現がどんなに優れていても、再生音場や音域に不自然な違和感があるといけません。しばらく試聴を続け、シールドも試みたらモヤツキはすっかり消え、かつてのキレ味を甦らせました。数年間、10個程のMCを詰め込んだカタコンブで、強力な磁気干渉でエンジンがおかしくなっていたか、それともエージング効果か。手間と時間がかかったけれど、終わりよければ全て良し。

                                   19th.Nov.'13
 今年最後の更新は、カートリッジとの因縁めいた話です。使用したことのある機種をあげると、現役ではDENON DL-1000A×2,DL-305×2,DL-303,DL-103GL、ortofon kontrapunkt b,MC-30S,MC-20S、Luxman LMC-1、YAMAHA MC-1000,MC-100,MC-4,、CRAFT AC-01、HIPHONIC MC-A6、audio-technica AT-37E,AT-36E、Technics MC305 MKU。これと別に破損または針交換した順に、YAMAHA MC-7×2,MC-1000×3,MC-3×2、DL-305×3、HIPHONIC MC-A6、AT-36E、GLANZ GMC-20E、AKG P8ES。処分した順にFR-1 MkU, MkV、SATIN M-21×2、AT-33VTG、MC205C-UL、Shure V15-V、DL-304、BENZMICRO Glider SL etc.

 最も思いで深いのはYAMAHA MC-1000で、82年発売直後に1本目購入。2年後、出張中に小学生だった娘がレコードを聴こうとして破損。娘が触れるのを自由にさせていたが、万一を考え針交換可能なSATIN M-21に替えておこうとしながら手抜かり。この時針交換で入手した2本目は、84年から06年まで22年間2,000時間以上の最長実動記録。談義U-07で逝く直前に評価していますが、遠方の友人と評価感度あわせで同一盤の試聴インプレッション交換しようとして、再生中にチップが崩壊しました。数年後、ボンドの劣化でチップが抜けたDL-100 0Aと同封で、MC-1000のスタイラスを付けてYAMAHAに納めていたA氏に送ったところ、『針交換出来ます』の回答。 DL-1000Aのチップ消耗カンチレバー交換を奨める文面から、これもカンチ交換を指すと判断して中止(談義V-14)。自分で他機種の針先を継ごうと試みて折損 ^_^; これは破損品収納小箱”カタコンブ”入り(画像1&談義T-15画像) 。

 3本目は一昨年、購入直後短時間の音出しで想い出にあるMC-1000のイメージがなく、リード線等を吟味した他の手持ちレベルより劣ると感じて放置したが、長く使用していないと再生当初は音が出ない。しばらく後、本格的に試聴しようとリード線を替え、印加調整時に仮置きした釣糸式IFC錘落下でアームが横に跳ね、ターンテーブル面をスケーティングして折損! ^_^; 事故を知った遠方の友人から、『JICOでチップ替えしたが、この音質はいかが?』と、試聴の機会を与えられた。その音質はオリジナルと遜色なし、自分のもいつか復活させようと…。