T-21 音も導体も磨いてこそオーディオ!
 2015年、正月ですから何かそれらしい話題を……、と考えましたが何も浮かびません ^_^;
とりあえず、明けましておめでとうございます、 と今頃になった賀辞から始めて、思いつくままの話題です……。

 爽やかに伸びる高域、癖のないスムーズな高域表現で再生してみたい。これは、LPレコードを聴く上で一つの課題でした。ソプラノ領域が数オクターブにもまたがって、クリスタルボイスと云われる美声の女性歌手でも、スムーズに美しさが受け容れられる場合と、どうも耳に馴染まない不快な刺激感のあるきこえ方があります。所謂 "癖"のある再生で、どこかで元の音にはない歪みが付加されると考えます。あるいは、レコード盤製作過程に起因するかも知れず、多くは再生過程が疑われます。しかし、美声悪声、歌い手の声質そのものに起因するかも ^_^;

 たとえばキャスリーン・バトル、ホイットニー・ヒューストン、メリー・ホプキン、本田路津子、八神純子……、高域がスムーズにのびる女性ボーカリストが即座に浮かびますが、一方でロック系歌手の多くは無理なシャウトで声をつぶしているのか、高域は悲惨だったりします。風邪気味の女性の声、少しハスキーなシンガーは男心をくすぐる何かがありますが、過ぎると妙な具合で、Bonnie Tyler とか、葛西ユキのレベルになると一歩退きます。

 最近、ほとんど聴ないレコードを整理しようと、洋楽ポップス・ロック系ジャンルのレコードをアルファベット順に再試聴しています。現在A〜P迄進んで、昨日ロックのPat Benaterを聴いていて、33回転LP邦盤アルバムと、同じ曲を45回転で30cm盤に片面1曲ずつ刻んだUK盤があって、先の盤で酷く感じた歪みは、後者では全くスムーズです。ボーカルレコード再生では、レコーディングエンジニアが歌い手の力量を見限ったか、屡々手抜きを感じます。タレント歌手レコードの粗雑な作りと、力量のある歌手の丁重に製作されたレコードでは、まるで別物です。その点、旧いSP盤は、当時最高の高価格商品であり、歌い手の力量もまさに当時の頂点、レコード製作も最高の技術が駆使されたろうと感じさせます。

 再生音をヒアリング中、何か満足できない点があるとまずカートリッジを替え、さらに原因と推定される器機やパーツの阻害要因としてイメージした電気的あるいは電子的現象(妄想?)を仮説立て、容易なことから手を加えます。対策ポイントは、再生情報電流を如何にピュアーに保ち、阻害要因を排除してスムーズに流すか、導体内部の抵抗やノイズ低減と外部ノイズ遮断と云う観点で考察します。

 たとえば、導体の末端や端子部分、異種金属境界等では電位差が生じ、迷走電流は周辺を傷害して錆びを生じ、電流を乱して情報を欠落させます。金属は折り曲げると硬化し、その分子や原子の並び方は変化し、それは情報の流れを阻害する要因となるでしょう。電流とは、電位差のある間を電子が移動しその逆方向に電流が生じる原理ですから、アース導体の品質ですら電流を阻害する品位であれば、上流電流へのプレッシャーとして影響するかと考えたりします。

 まだノウハウが乏しかった頃に、ヘッドシェルSuper Kite用に、ハイレベルな素材として選択したortofon 8N銅線+高純度銀clad OFC線をハイブリットして、素材コストとしてこれだけ投入すれば……、という思いは脆くも砕けて失敗しました。この導体はそのまま保存サンプルが手許にありますが、銅色はほとんど失われ灰褐色に変色しています。両金属の境界面で電位差電流が生じ、銅と銀が常温で融合したと推定します?

 表面酸化皮膜形成もまた大きな障害で、影響は高域成分に集中します。所謂表皮効果といわれる、高周波電流は導体表面を流れる原理です。表皮効果は高周波レベルの話で、オーディオ帯の高域情報には関係しないと云うのが俗説ですが、私の使用SPケーブルのμ導体開発者は、明らかに影響を認めると、私の聴覚評価と同じ結論です。

 画像2は右が新作、左は5年保管サンプルで、放置され電流が流れないと酸化は速やかです。8N銅であっても、酸化皮膜形成した導体表層は、そこらの電線と同じレベルでしかありません。8N銅の深々とした高域表現を求めても無理です。

 正月は端子磨きで音をリフレッシュ。サンドペーパーは導体表面の平滑面を粗面として劣化を早めるかと危惧して、新アイテム軟質タッチのスポンジ・ヤスリを導入。これで磨いた後に不織布ベンコット(Visco33とほぼ同質)で磨きます。平滑な導体表面が輝くと、きっと良い音がしそうな予感がします。
                          18th.Jan.'15