最近、ほとんど日本語を知らない、英語圏初心者の指導に当たっています。Jemmyは半年前から他の指導者の下で練習していました。とても腕力があって、引分けを見ていると、多少の無理は勝手の力で解決しようとします。大三から勝手肘が下がったり上がったりしながら引分け、会では結局正しい位置に納めてしまいます。これが離れに影響して癖がありました。

 引分けの移行と力の働かせ方を「肘で引き、肘で切る」、「両肩胛骨を背面であわせるように引く」と指導されたことが察せられました。力学的に理にかなった引き方は、同時に、その終局として『離れを孕む会』であること、そのために勝手の手の内の外側に働く力、肘の働き、胸から肩に向かって外側に働く力の方向を話しました。

 つたない語学力ですから、動作を交えて必死です(笑)。大三から会まで、勝手の中心軸にそって移行すること、力の働かせ方は背面を縮める方向でなく、胸から両肩を開くように左右に伸びあっていくこと。結果として、両肩胛骨は背面で近づくことになるが、力の働いている方向は異なることを教えて解決しました。

  腕力がありますから、飲み込むと弓に負けることなく即実行できます。大三のフォームが勝ち手の収まる位置に向かって正しくセットされると、容易にスムーズな引分けが出来ると理解して、大三と会の形も美しくなりました。力の働かせ方と伸び合う方向が定まって、鋭い大離れも可能になりました。

  時に離れに失敗しますが、理由を尋ねると、"too thinking about drawing" と笑います。一度に二つを矯めることは難しいのですが、来月の審査を控えてがんばっています。

 いつか古い弓引きに、「三がけの一本引き」といわれたことを、今になって思い出します。大三から会までは、後方と下方向への二方向を統合したライン上を引分けよという教えでした。実にシンプルな表現だと感心します。

  今月から、Cristieが、新人教室に参加しました。名の通りcrystalのように輝く女性です。ゴム弓から進んで、弓を取っての引分けで躓いています。引分けは、二つの方向に働く力の合力で、それを別々の方向に2回に分けて働かせるのではないと伝えたいのですが、勝手の運行を自分自身で見るのは困難です。

 そこで、"look at your right hand "と、自分自身で勝手の運行状態をトレースする私流の引分けトレーニングですが、意味が分からないようです。語学力不足で、打起から大三を経て会に至るまでのスムーズな運行と、正しいフォームの力学的意味を説明できないまま指導を代わりました。次の方は、「両肩胛骨を背面であわせるように引く」 と……。もっと英語力をつけておくべきだったと、悔いる毎日です。