I Was Born To
             Love You
 
             〜貴方を守るために〜



  5. 



 「あにうえ・・・」

 ファラミアが目を覚ました。

 「ルドに来てもらったから・・・もう安心だよ。」

 「すみません・・・ルド。こんな夜中に・・・」

 ファラミアは小さな声で言った。

 「何を言っているんだ。病人が遠慮なんかするものじゃない。」

 ルドが笑いながらファラミアの頭を撫でた。

 「何かしてほしいことはあるか?」

 ボロミアが尋ねた。

 「傍に・・・いてください。」

 ファラミアが縋るような眼差しで言った。

 ボロミアは首肯いて手を握った。



 熱はなかなか下がらなかった。

 ボロミアはルドと共に朝まで付き添っていた。

 「ボロミア様、少しお休みになってください。

 貴方も病み上がりなのでしょう?」


 「大丈夫です。ファラミアのおかげですぐに治りました。」
 
 「でも、少し眠ってください。今、ここでボロミア様まで倒れたら

 誰がファラミア様の看病をなさるのです?」

 ルドがいつになく強い調子で言った。

 「あにうえ・・・」

 ファラミアも心配そうにボロミアを見つめていた。

 「解りました。では、ソファで寝ます。」

 ボロミアが頷いた。



 「ボロミアはここか?」

 声がした。

 父デネソールだった。

 父が扉を乱暴に開けた。
 
 「父上?」

 「何をしている?こんなところで・・・」

 「ファラミアが病気で・・・」

 「そんなことは医者に任せれば良い。」

 デネソールが言った。

 「でも・・・ファラミアは私が居れば喜ぶのです。」

 「そんなことが何になる?」

 デネソールがボロミアの手を掴んだ時、その手をルドが止めた。

 「デネソール様、ここには病人が居ります。」

 ルドが静かに言った。

 「病人ならば療病院に連れていけ。」

 デネソールが言った。

 「ファラミア様がボロミア様が傍らに居ることをお望みです。

 伝染性の病ではございません。」

 「ボロミアが居たからと治るわけではあるまい。」

 デネソールがきっぱりと言った。

 「病は気からと申します。」

 「何?」

 「デネソール様が一番ご存じのはず。フィンドゥイラス様はどんなに

 具合が悪くなられても貴方の傍らではいつも穏やかに微笑んで居られた。」

 ルドが穏やかな口調で言う。

 「だが逝ってしまった。」

 デネソールが天を仰いだ。

 「デネソール様が傍らに居られる時は心安らかだったはず。

 ほんの少し歯車が狂っただけのことです。」

 デネソールはファラミアを見た。

 「似すぎている。」

 「ええ、ファラミア様はフィンドゥイラス様に似て居られます。

 でも、デネソール様、貴方様にも似ておられる。」

 ルドの一言にデネソールはしばらくボロミアとファラミアを交互に見ていた。

 やがて、ほーっと深く息を吐いた。

 「勝手にしろ!」

 そう言って部屋を出ていった。



 「あにうえ・・・行かなくて良いのですか?」

 ファラミアが不安げにルドとボロミアを見比べた。

 「大丈夫だ。」

 ボロミアの代わりにルドが言った。

 「傍に居るから。」

 ボロミアも笑顔で言った。



 ボロミアはルドの言うとおりにソファでしばらく眠った。

 ボロミアが目を覚ましたのは昼も近い時間だった。

 「ファラミアは?」

 目覚めるとすぐにルドに尋ねた。

 「まだ熱があります。」

 ルドが手短に言った。

 その表情からファラミアの病状が決して良くないことは感じ取れた。
 
 「ファラミア様、何かお召し上がりになりませんか?」

 「食べたくない。」

 ファラミアが言った。

 「でも、食べないと・・・薬を飲まないといけませんし・・・」

 ルドが言った。

 「でも・・・食べたくないんだ。」

 いつになく強い調子でファラミアが言った。
 
 「ファラミア、何か好きなものを作ってもらうように頼んでくるよ。何がいい?」

 ボロミアが明るい口調で言った。

 「本当に何も食べたくないんです。

 兄上・・・父上がお怒りになりますから・・・もう行ってください。」

 ファラミアが言った。

 「ファラミア・・・私が傍にいるのは迷惑か?」

 ボロミアがファラミアを真っすぐに見つめながら尋ねた。

 「嬉しいです。でも・・・それで父上がまた機嫌を損ねてしまうから。」

 ファラミアが泣きそうな顔で言った。
 
 「さあ、お話はそれくらいにして・・・ファラミア様、ボロミア様も

 私も居りますから、眼を閉じて。」

 ファラミアはその言葉に従って素直に眼を閉じた。

 やがてファラミアは眠ってしまった。

 「何か食べて頂かないと・・・」

 ルドがため息を吐いた。






「亡くした最愛の妻に似過ぎていて次男に辛くあたるデネソール」という設定は

実は「ロード・オブ・ザ・リング」の「二つの塔」のSEEのシーンコメンタリー

の中でのジョン・ノーブル氏のコメントが参考になっています。

「王の帰還」もシーンコメンタリー付きで早く見なくちゃ。

2005.03.23 Jeroen