初戦
アレキサンダーは16歳ぐらいの時から、フィリッポス王について戦いに参加していた。彼の活躍はそのころから素晴らしいものであった。私は彼と一緒に訓練には参加していたが、実際の戦いに行ったことは1度もなかった。それはプトレマイオスやカッサンドラなど他の仲間も同じであった。私達はただ集まって彼の活躍を聞くだけであった。
「アレキサンダー、すごいじゃないか、俺も早く一緒に戦いに行きたいよ」
「次の戦いには、一緒に来てもらうかもしれない。俺は1つの隊の指揮をとるように命令されている」
「どこと戦うんだ」
「スパルタとアテネの連合軍だよ」
「それはすごい、いよいよギリシャ全土の統一か。きっと歴史に残る戦いだよ。ぜひ一緒に連れて行ってくれ」
真っ先に戦いに参加したいと言うのはカッサンドラであった。私は訓練には参加していたが、実際の戦いへ行くのは考えるだけでも恐ろしいことであった。
「連れて行ってもいいけどさ、今度の敵はスパルタとアテネの連合軍だ。今勢力が衰えているとはいえ、どちらの軍も長い伝統を持っている。簡単に勝てる相手ではない。それに俺が今回任された隊は、真ん中の先頭だ。最初に攻撃される」
「それはどういうことだ」
今度は慎重なプトレマイオスが口をはさんだ。
「新しい王の跡継ぎ、俺の義理の弟が無事生まれた。邪魔者になった俺は歴史に残る戦いで活躍して戦死するのが、一番ありがたいんだろう。あいつの考えそうなことだ」
「それならぜひ俺も連れて行ってくれ。大丈夫だよ。俺たちが力をあわせれば、連合軍だろうとなんだろうときっと勝てる。アレキサンダーは、今までだって危険な場所で戦ってきたけど、けがをしたこともないじゃないか、きっと神様が味方をしているんだよ」
「そうだな、ギリシャの運命を分けるこの戦いで活躍すれば、アレキサンダーは誰もが王の跡継ぎと認めるだろう。ぜひ俺も連れて行ってくれ、少しは役に立てるかもしれない」
「カッサンドラとプトレマイオスが参加してくれるなら心強いよ」
「ヘファイスティオン、お前はどうする?」
「僕は・・・」
「ヘファイスティオンは止めておいた方がいい。あのスパルタが相手だ。下手に戦ったらすぐに殺されるよ」
カッサンドラの言うとおり、私は仲間の中で、いや数十人いる訓練生の中でも、一番弱くて負けてばかりいた。下手に戦い似など参加したらみんなの足手まといになるのは間違いないし、殺されるかもしれない。
「ヘファイスティオンも一緒に来てくれ」
「でも、アレキサンダー、僕が行っても邪魔になるばかりだよ・・・」
「そんなことはない、お前が来てくれれば俺はきっと勝てる」
「それじゃあ決まりだ。みんなでアレキサンダーと一緒に戦おう。プトレマイオス、少し作戦を考えてくれ。誰がどう動けばいいか」
「わかったよ、それで出陣はいつだ」
「7日後だ。急いで準備しないと」
「今日は、アレキサンダーの勝利と活躍を祈って飲み明かそう」
結局最後は酒を飲むことになってしまう。そして私がアレキサンダーの介抱をすることに・・・私が彼をベッドまで運ぶと、彼は必ず私の手をつかむ。
「わかっているよ、アレキサンダー、ずっとそばにいればいいんだろう」
私は自分の服を脱ぎ始めた。
「今日は服を着たままでいいよ。そのままで一緒に寝てくれ」
「どうして、だっていつもは・・・」
「ヘファイスティオン、お前今いくつだ?」
「18だよ」
そうだよな。俺と同じ年だから・・・あれから2年たった。俺と何回ぐらい寝た」
「数えてないよ、そんなこと」
「数え切れないくらいお前を抱いた。それなのにお前はちっとも慣れなくて、いつも初めてみたいに、大声をあげて泣き叫ぶ。そんなに痛いのか」
「そうでもないけどさ」
「いいよ正直に言って、痛いけど、それでも気持ちよくて、またすぐやりたくなるんだろう?」
「うん、まあそうだけど・・・」
「お前のそういうところが俺は大好きだよ。お前だけだよ、いつまでたっても変わらないのは・・・でも今はがまんしろ。7日後には俺たちは出陣だ。7日間お前を特訓してやるから覚悟しろ。お前の腰が痛くなって歩けなくなったら大変だ。だから俺もがまんする」
「わかったよ。でもどうして僕に戦いへ行くように言ったの」
「お前が必要だからだよ。俺が勝つためには、どうしてもお前が必要だから・・・」
彼は寝たまま私を抱きしめ口づけした。私の体は小刻みに震えていた。
「ヘファイスティオン、怖がらなくても大丈夫だよ。必ず俺がお前を守ってやるから」
「でも、僕が一緒に行く意味は全然ないね」
「あるんだよ。お前をこうして抱いているだけで、俺はすべてのことを忘れられる。最初、王から次の戦いについて命令された時は目の前が真っ暗になった。こうやって俺は殺されるのか、と思ったよ。でも今は違う。必ず勝てる気がする。神が味方してくれているのをはっきり感じることができる。俺がアキレウスでお前はパトロクロスだよ」
「君がアキレウスなのはわかるけど、どうして僕がパトロクロスなの」
「俺が一番愛しているのがお前だからだよ」
「でも、戦いなんて初めてだからどうしたらいいか・・・・」
「すぐに慣れるよ。俺だって初めての時は怖かった」
私達は服を着たままで抱き合い体を絡めあった。どちらの体も熱くなり、息が荒くなっているのを感じた。
「アレキサンダー、このまま寝るのは無理じゃないの」
「いや、俺は7日間は我慢する。勝利をつかんだら、その時2人で祝杯をあげよう。それまでは待っているよ。いいか、俺はお前のことが一番心配だ。活躍などしなくていい。間違っても死んだり怪我したりするな」
「わかっているよ」
「愛しているよ、ヘファイスティオン。7日後に一緒に勝利を祝おう」
−つづくー
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後書き
ヘファイスティオン、随分頼りない感じですが、逆にこの頼りなさが守ってあげたいという気持ちになり、アレキサンダーを強くするのでしょうか?初戦というタイトルなのに戦いの場面が出ないうちに終わってしまいました。次回戦闘場面になりますが、語り手のヘファイスティオンも作者も戦いは苦手なので、その場面は短くなると思います。でもヘファイスティオンはアレキサンダーの片腕として活躍するのですよね。私の書く彼が活躍するようになるのか、不安です。