13、色硝子
ホビットの村に着いたら何故か大勢の子供に取り囲まれてしまった。俺は何故だかわからないが、子供や老人にやたらと人気がある。子供達が取り囲んでうれしそうなので、ついつい相手をしていたら、遠くで冷ややかな顔で見ているファラミアと目が合ってしまった。
「おい、もういいだろう。俺達は疲れているんだ。どこかこの村で、俺達の泊まれそうな家はあるか?」
「オオキイヒト、ウチニキテ」
「ボクノウチノホウガオオキイヨ」
「ズルイヨヒトリダケ」
「待て待て、けんかをするな。俺達は大きいから大きい家でないと入れない」
「ホホー困っておるようじゃな、旅の者達よ。彼らはお前さんたちを歓迎したいのじゃ。」
突然、灰色のみすぼらしい服を着た老人が現れた。
「あなたは、もしかしてミスランディアですか?」
「おお、お前はミナス・テリスのファラミアか?大きくなったな。お前さんたち兄弟そろってこんな遠くで何をしておる?北の野伏と一緒とは珍しい組み合わせだな」
「僕達、ある秘密の目的で旅をしているのです。と言ってもあなたにはすぐ秘密なんてわかってしまいますよね」
「そうじゃな、お前の考えていることぐらいすぐにわかる。宝探しに来ているが、大事な地図を取られてしまった、そうだろう」
「そうです、やっぱり魔法使いは違いますね。考えていることがすぐにわかってしまう」
ファラミアはその灰色の老人と楽しそうに話をしている。
「おい、ファラミア、なんだその灰色の・・・」
「魔法使いのミスランディアですよ」
「このあたりではガンダルフと呼ばれている。東の土地では・・・」
「名前などどうでもいい。お前なんでこんな魔法使いと知り合いなんだ」
「ミナス・テリスの地下の図書室で何度か会いました」
「ファラミアは実にかしこい子じゃ、何度もわしの手伝いをしていろいろ調べてくれた」
「俺は少しも知らなかった」
「兄上は図書室などほとんど来ないからですよ」
「俺の知らない間に、やたらに怪しい人間と親しくなるな!」
「ミスランディアは人間ではなくて魔法使いですよ!」
「それならなおさら怪しい!」
「まあまて、兄弟で言い争いをするな。わしが言いたいことはじゃな、この先の丘の下にある家ならお前さんたちでも充分泊まれそうなほど広いし、それに宝探しに役立つ物が置いてある」
「なんですか、それは・・・」
「今ここでは言えん。よく周りを見てみろ、海賊どもも聞き耳を立てているぞ」
「そうですね。遠くで海賊たちが様子をうかがっていますね」
「それからファラミア、お前は空を飛んでいるものに充分注意しろ。でないととんでもない場所に連れ去られるぞ!」
「なんだ、それは!」
魔法使いが変なことを言うので俺は思わず大声を上げた。
「それがなんなのかわしにもようわからん。ただ空を飛ぶものに注意しろということじゃ」
「あてにならない予言だな。ファラミアが危険なのか?」
「まあ、ファラミアに危険がせまればお前さんとて、危険にさらされるだろう」
「当たり前だ!ファラミアに何かあったら俺が黙っていない!」
「充分注意するのじゃ。それじゃあわしは先を急ぐから・・・」
言い終わらないうちに魔法使いは走り去り、たちまち姿は見えなくなった。
「なんだ、あれは・・・」
「魔法使いってそんなもんですよ。大丈夫です。僕はいつも周りに注意していますから・・・」
魔法使いに言われたとおり、丘の下の家に向かった。もちろん俺達だけではなく、ホビット達もぞろぞろ付いてきた。いつのまに集まったのか、子供だけでなくて、大人の顔をしたホビットもたくさんまじっていた。家の中はかなり広く、俺たちでも充分手足を伸ばしてくつろげるほどなのだが、それでもたくさんのホビットに取り囲まれて身動きができない。ファラミアと二人の野伏、ハルバラドとインゴルドは窮屈そうにしている。
「ドレ、コレガオオキナヒトカ、ワシニモヨクミセテオクレ。ナルホドオオキクテノブシトハチガウ。ナンテリッパナオスガタデ・・・アアアリガタイ、イキテイルアイダニ、ミナミノチニスムオオキナヒトにアエルトハ・・・」
かなり歳を取った老人が現れた。
「ワシノイエニハ、トオイムカシヌメノールヨリツタワッタトイウカホウガアル。コレハオオキイヒトノモノデアロウ。フルイジダイノモノダ」
老人はなにやらいろいろな色に光るものを大事そうに持ってきた。
「きれいなものだ。壊れそうだけど・・・触ってもいいですか?」
「ニンゲンノオウノモノデス。サアドウゾ」
「僕は王でも王子でもないよ」
「俺達は執政家の子だ、いまやゴンドールでは王に代わって執政が・・・」
「ボロミア、執政と言っても彼らには通じないだろう。とりあえず彼らは俺たちを歓迎しているようだし、このものは・・・どうやって使うかわからないが・・・何か役に立つかもしれない」
それまで黙っていたハルバラドが口を開いた。ファラミアはその光るものを手にとっていろいろ動かしている。
「わかった、これはこうやって使うんだ。うん、よく見える。世界が赤くなっている。こっちにすると黄色で・・・これはすごい!」
ファラミアはそれを目のそばにあてた。赤いものを目に近づけると赤く見え、黄色は黄色に見えるらしい。
「おい、ファラミア、俺にもちょっと貸してくれ」
「壊さないでくださいよ。めったにないものですから」
「でもこれは何に使うのだろう。ヌメノールから伝えられたというのなら、何か意味があるに違いない」
「わかった!これを目にあてて、あの宝の地図を見るのですよ。そうしたらきっと何か別のものが見えるに違いない」
「そうだ!きっとそうだ!」
「でも僕は宝の地図をうっかりして海賊に取られてしまった」
「心配するな、ファラミア、俺が必ず取り返してやる」
夜になると外の方が騒がしくなった。いつのまに集まったのだろう、何百人というホビットがパーティーの準備をしている。その中にまざっている大きな人間は海賊のギヤマンドラとバラバとゴント!
「やいお前たち、海賊がよくもずうずうしくパーティーに参加しているな。おい、よく聞けホビットたち、この3人は海賊といって船で生活しながら他の船を襲ったり、村を襲ったりする悪い人間だ!」
「オオキイヒト、ワルクナイ、ボクタチヲマモッテクレル」
「ホビットに海賊は悪者だといっても通じないよ。俺達野伏が長い間この辺りの村を守ってきたから、人間はみんないいものだと信じている」
「そっちの野伏の言うとおりだ。俺達海賊だって礼儀というものは心得ている。パーティーでもてなしてくれようっていうやつらを襲ったりはしない」
「本当だろうな、こいつらに何かあったら、ただではおかないからな!」
なんだかよくわからないまま、ホビット達のパーティーが始まった。俺の周りにはたくさんのホビットが集まって盛んに食べ物をくれたり、ビールをついでくれたりする。いくらたくさんくれてもホビットのグラスや皿は小さいからいくらでも食べられる。
「タイヘンダ、ドラゴンガキタ」
「ドラゴンダ!カクレロ!」
ホビットたちが何か騒いでいる。
「大丈夫だよ、これは魔法使いが作った花火だ。さっきからいっぱい花火があがっているだろう」
ファラミアが笑いながら言っている。だがあれは花火だろうか?やけに大きく生き物のように動いている、と思った瞬間その影はすぐ近くまで来た。とっさに身をかがめた。ドラゴンはファラミアの持っていた光る物を口にくわえた。
「何をする、返せ!」
「ファラミアよせ!危ない!」
「たすけて!」
ファラミアがドラゴンの口から取られたものを奪い返そうとした時、それは口にファラミアも加えて空に飛び立った。
「ファラミアを離せ!」
近くにいた海賊のゴントがとっさにそのドラゴンの大きな口に飛びついた。あっという間のできごとであった。ドラゴンは二人を加えたまま空高く飛んでたちまち見えなくなってしまう。
「なんということだー」
俺も野伏の二人もホビットたちも呆然と空を見詰めるだけであった。
「ファラミアー、ファラミアー」
「ゴントー」
いくら叫んでも、二人の姿は見えない。
「大変なことになってしまった!」
俺と海賊の首領ギヤマンドラは同時に叫び、地面に座り込んだ。まだ空には花火が上がっている。
「とにかくあの魔法使いに助けを求めよう!」
俺は花火を打ち上げているらしい方へ向かって走り出した。
−つづくー
後書き
ホビットのパーティーや魔法使いの花火、宝の地図を見るための色ガラスのついた眼鏡にドラゴン・・・思いついたものや映画に出てきたものをかってきままに使っています(笑)ファラミアと海賊の一人がさらわれてしまい、これからどうなるのでしょう。
![]()
![]()
![]()