14、ドラゴンの棲家
あっという間に僕の体は空高く運ばれてしまった。助けを呼ぼうとしても、声を出すこともできない。ドラゴンはぐるぐるまわって高く上っていく。振り落とされないように牙にしがみついているのが精一杯であった。下には雲とそれ以上高くそびえる山が見える。急に寒くなってきた。雪と氷に覆われた山の一つに向かってドラゴンは少しスピードをゆるめて飛んでいく。山の斜面に来た時、ドラゴンは大きく口を開け、僕は振り落とされてしまった。同じようにドラゴンの口にしがみついていたゴントも手を離した。
「ファラミア、大丈夫か」
「大丈夫、ちょうど雪の上に落とされた」
「こんな場所に長い時間いたら凍え死んでしまう。歩けるか」
「歩けるけど、どうしてドラゴンは僕達をここに・・・」
「話している間にも体が冷えてしまう。近くに洞窟がないか探してみる。お前はここで待っていろ」
海賊のゴントは一人で歩いていってしまった。一人残されると急に心細くなる。空にはまだドラゴンが何か探しているのかゆっくり回りながら飛んでいる。あわてて僕は岩陰に身を隠した。これから僕達はどうなるのだろう?寒さで凍え死んでしまうのか、それともドラゴンに食べられてしまうのか。ミスランディアに注意されていたのに、僕は今持っているこの光る色硝子に気を取られて、すっかり油断していた。ゴントは僕を助けようとして、ドラゴンにしがみついてしまった。僕がもう少し気をつけていれば・・・そもそも僕が宝探しに行こうなどと思いつかなければ・・・ボロミアは心配しているに違いない。もう二度と会えないのだろうか。
「おい、ファラミア、泣くんじゃない!近くに洞窟がある。そこまで急ごう・・・しょうがないな、そこまで背負ってやるよ」
「いいよ、そんなこと。子供じゃないんだから」
「お前今、兄貴のことを考えて涙ぐんでいただろう。俺も同じだ。今頃兄貴はさぞかし心配しているだろうな」
「お兄さんがいるの?」
「バラバの兄貴のことだ。俺達血のつながった本当の兄弟ではないけど・・・本当の家族はいない。村がオークに襲われて子供だった俺だけが生き残り、ギヤマンドラのお頭に拾われた。バラバの兄貴も同じだ。俺達は兄弟のように一緒に育てられた」
「そうだったの」
「急がないと体が冷える、お前足を怪我しているだろう」
ゴントに言われて自分の足を見て驚いた。落とされた時、どこかにぶつけたのだろうか、大きな傷があり、血が出ている。今まで驚くことばかりで痛みも感じていなかったが、急に痛さも感じるようになった。
「遠慮するな。ここには俺しかいないんだからしょうがないだろう。俺達海賊は船や村を襲って宝を奪っているが、人殺しはしたことがねえ」
「そうみたいだね。それに僕を助けようとして一緒に・・・」
「お前を助けるためじゃない。お前が持っていたものが気になっていた。俺は出来損ないの海賊だから少しはいいところを見せようとしたらこんな所まできてしまった」
「僕一人だったら、本当にどうしたらいいかわからなかった」
「ごちゃごちゃ言ってないで、早く乗れ」
ゴントに背負われて洞窟までやってきた。ゴントは手早く僕の傷の手当てをしてくれた。そこは入り口は狭いが中は驚くほど広くなっている。よく見ると下に何か光るものがたくさん落ちている。
「これは何だろう」
「すげーな、お宝がごろごろ転がっている」
「でもこんな山奥に誰が・・・」
「人間はここまで来られない。おそらくドラゴンが運んできたのだろう」
「ドラゴンは光る物が好きで、それを集める習性があるって聞いたことがある」
「光る物か、それでお前の持っている物をねらって飛んできたのか。そしてここまで連れてこられた。見ろ、このお宝の数々を!お頭が見たら涙を流して喜ぶぜ」
「でも、どうやってここから戻るの?」
「それが問題だな」
「僕は無事に帰れればそれでいい。宝探しはもうやめるよ。地図は持っていっていいよ。それからこれも・・・もう僕には必要ないから・・・こんな物のせいで兄上と離れ離れになってしまった」
僕は手に持っていたものを洞窟の壁に投げつけようとしたが、その手をゴントが押さえつけた。
「待て、ファラミア!これはきっと地図を見るためのものだ。俺が地図を持っている。よく見てみろ。宝探しを簡単にあきらめるな、それはお前達の祖先がお前達のために苦労して残してくれたものだろう。どれだけの思いで宝をわざわざ運んできたのか、その気持ちを考えれば・・・」
「そうだね、僕達はゴンドールを再建しなければいけない」
ゴントが地図を広げ、僕は色硝子を自分の目に当ててみた。するとどうだろう、違う色の硝子で見るたびに地図には違った形と文字が浮かび上がる。
「すごい!全く違う文字が見えてくる、何が書いてあるのだろう」
「おい、俺にも見せて・・・あ、だめか、海賊に宝のありかを教えるようなやつはいないよな」
「見ていいよ、どっちみちこの宝を探し出すことは僕達には・・・」
「あきらめるな、きっと助けは来る。俺の兄貴とお前の兄貴が助けに来てくれるよ」
「でもどうやって?」
「それはわからない。でもバラバの兄貴はどんな時でも俺を助けてくれた」
「僕の兄上だってどんな時でも助けてくれるよ」
「それなら大丈夫だ、二人の強い兄貴がいるんだ。俺達はきっと助かる」
「でもボロミアは力は強いけど、考えることは苦手だから・・・」
「バラバもそうだ!いつも俺がアイデアを考えるのに手柄を横取りされてきた」
「それじゃやっぱり僕達は自分の力でここを抜け出さないといけないね」
「力ではなくて知恵を使ってだろう。俺達二人とも力では兄貴にかないっこない」
「ふふ、そうだね」
僕達二人はいつのまにか仲良く話し、笑い合っていた。こんな状況では争ってなどいられない。ここから抜け出す方法を考えなければ・・・外は雪が降り、吹雪になっていた。しばらくの間はこの洞窟から出られそうもない。
−つづくー
後書き
海賊と一緒にドラゴンにさらわれてとんでもない所までつれてこられたファラミア、いつのまにか兄貴の話で盛り上がってしまいました。同じ頃二人の力自慢の兄貴達は弟がさらわれて大騒ぎをしていることでしょう。
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