15、花火
それはあっという間のできごとであった。空へ上がってはひかり、たちまち消えてしまう花火のようにファラミアと海賊の一人はドラゴンに連れ去られてしまった。空に花火が上がっているということは、近くにまだあのいまいましい魔法使いがいるに違いない。まったくあの魔法使いが変な予言なんかするからファラミアはドラゴンにさらわれた。
「おーい、ゴント!どこへ行った、返事をしろー!」
海賊のバラバも仲間を探しているようで、大声で呼ぶ声が聞こえた。
「だめだ、ここにはいない、ファラミアと一緒にドラゴンにさらわれた」
「ボロミア、それは本当か?」
「ああ、間違いない。この目で確かに見た」
「俺達はこれからどうしたらいい」
「とりあえず、向こうで花火を上げている魔法使いの所にいってみよう」
「魔法使いに近づいて大丈夫なのか」
「他に方法はないだろう」
俺とバラバは花火を見ながら魔法使いがいるらしい方へと走っていった。
「ゴントのやつ、俺に心配ばかりかけさせやがって、子供の時からあいつはドジでできそこないのやつで俺がいつも尻拭いをしていた」
「兄弟なのか?」
「本当の兄弟ではないけれど、ずっと一緒に生活していたから、弟のように思っていた」
「急ごう、魔法使いがいなくなったら大変だ!」
魔法使いはまだ鼻歌など歌いながら熱心に花火を上げていた。俺は大声で怒鳴った。
「やい、魔法使い!のんきに花火なんか上げている場合か!大変なことが起きた。ファラミアがドラゴンに連れ去られた」
「ゴントも一緒だ!ドラゴンは今どこにいる。早く教えろ」
「ふむ、ゴンドール執政の世継ぎと、海賊が一緒にやってくるとは珍しい。こんなこと、わしの長い生涯でも滅多にないことであった。ホビットはまこと平和を愛するまれな種族、長年いがみ合っていた者達をも仲直りさせるとはいや、めでたい」
俺は怒りに体が震えた。隣にいるバラバに手を押さえられていなかったら、間違いなくこの魔法使いを殴りつけていただろう。
「何がめでたいだ!、ミスランディア!ファラミアがドラゴンにさらわれたというのに・・・」
「わしは、南の国ではミスランディアと名乗っているが、この辺りではガンダルフと呼ばれている。もっと北に行けばまた別の名前が・・・」
「名前なんかどうでもいい。大事な弟分のゴントがさらわれたんだ、早く何とかしろ!」
「お前さん方、ファラミアとゴントがどうかしたのか?」
「ドラゴンにさらわれた!さっきから何度も言っているだろう!」
「おおー、それは大変だ。ドラゴンにさらわれたとは・・・空から来るものとはドラゴンのことだったのか。わしも最近では滅多に目にしたことがないドラゴンによりによってさらわれるとは・・・」
「どうすればいい!ファラミアは今どこにいる!」
「待て待て、いくらわしが魔法使いだからといってドラゴンの棲家まではわからん」
「おい、ボロミア、こんな魔法使いを当てにしても、何にもならない。こうしている間にも二人の命が危険にさらされているかもしれない。俺達だけでも探しにいこうぜ」
「ああそうだな、ここにいてもらちがあかない」
「まあまて、お前さんたちは本当にせっかちじゃな、どっちの方角に行ったらいいかもわかってないのじゃろう」
魔法使いは腰を下ろしてパイプを取り出した。
「パイプ草はホビットの村で取れたものが一番じゃ、お前さんたちも吸ってみるかい」
「そんなことより、早くゴントの居場所を教えてくれ」
「まて、そうあせらせるな、ミスランディアは時間がかかるが、言っている事はいつも正しいとファラミアが言っていた。ドラゴンなんて俺達にかなう相手ではない。今は魔法使いに頼るしかないのだから」
今度は俺がバラバの手を押さえて止める側になっていた。魔法使いはゆっくりパイプを吸い、煙を吐き出していた。俺達はイライラしながらも小声で話した。
「ファラミアは俺と違って小さな時から頭がよくてかしこい子だった。だけど気が弱いから今頃はどこかで泣いているかもしれない」
「大丈夫だ、ゴントはできそこないだけど気はやさしい。ファラミアをなぐさめてやっているよ」
「なぐさめるって、どうせ海賊だろう」
「海賊だっていろいろな性格のやつがいる」
「海賊は海賊だ。信用できない。今はこういう状態だから仕方なくお前と手を組んでいるだけだ。ファラミアが無事戻ってきたら・・・」
「当たり前だ。こっちだってゴントが心配だから一緒についてきた。そうでなければ誰がこんなこと・・・」
「お前さんたち、何をごちゃごちゃ言っている。今は仲間割れしている時ではないだろう。一刻も早く二人を救い出さなければ・・・」
「だからどこにいる!」
「よく、見ておれ」
魔法使いはゆっくりと煙を吐き出した。それはドラゴンの形となって小さくまわり、空へ登って行った。もう一度煙を吐くと険しい山の形になった。登って行ったドラゴンの煙がもう一度戻り、山の中に入って煙はすべて消えてしまった。
「ドラゴンは北の山へ向かった。二人もこの山のどこかにいるに違いない。人間だけで行くのは危険が大きすぎる、わしも一緒に行ってやろう。この後ストライダーと会う約束をしてあったが、あいつのことだ、わかってくれるだろう」
「本当に一緒にファラミアを助けに来てくれるのですか、ありがとうございます」
「お願いします、どうかゴントを助けてください」
この魔法使いの行動にはまったくいらいらさせられることが多い。だが、ドラゴンという全く未知の怪物が棲む山に向かうには、人間以外の者の助けも必要であろう。俺達は思いがけずドラゴンの棲む山にまで行くことになってしまった。
−つづくー
後書き
魔法使いはなかなか話の要点をわかってはくれず、イライラさせられますが、それでもドラゴンという未知のものを相手にするには魔法使いに頼るしか方法はなさそうです。
![]()
![]()
![]()