腰椎椎間板ヘルニアについての考察
骨と骨との間にはクッションの役割を果たす「椎間板」と言う軟骨があります。
その椎間板の線維輪(周辺の硬い部分)が破れ、髄核(中心部分)が出た状態を椎間板ヘルニアと言います。
好発犬種は、ミニチュアダックスフンド、ウェルシュコーギー、シーズーなど。
ただし好発犬種だからといって、全ての子に発症するわけではありませんので過剰な心配も不要です。
過激な運動もするおデブさんですが、全く病気を発症しないまま天寿を全うすることの方が多いのです。
病状が重くなるほど、つらく、せつない病です。
発症しないに越したことは御座いません。
早期発見・早期治療により、完治の可能性が高くなり、それにつれ治療費も抑えることが可能な病です。
「突然、悲鳴を上げ歩けなくなった」、「ぎっくり腰のようだ」、「抱っこをするだけで、腰あたりを痛がり嫌がる」、「腰をかばって、歩きたがらなくなる」、「びっこをひく」・・・。
このような症状が現れましたら、掛かり付けの獣医師に相談した方が良いと考えます。
ダックスフンド、ウェルシュコーギーなどの犬種は「軟骨異形成異常」という遺伝により胴長短足な見た目になります
この遺伝の作用により、軟骨性の変化を起こして椎間板が硬くなり、椎間板ヘルニアが発症しやすくなるようです。
また、理化学研究所らの研究グループらによって腰椎椎間板ヘルニアの原因遺伝子の 1つが11型コラーゲンを構成する遺伝子「COL11A1」の塩基の違いであることが判明しました。
海外の調査では椎間板ヘルニアの発症要因の70%以上は遺伝的な影響によるものと言われております。
過激な運動、肥満による荷重、日常的な負担(ジャンプ、ダッシュ、階段の昇り降り、チンチン)が病状を引き起こす原因とも言われます。
血統に椎間板ヘルニアの発症事例がなくとも、腰椎に負担を及ばす行為ですのでなるべく避けるようにして下さい。
これは健康や他の病状の発症に繋がる場合も十分に考えられますので、好発犬種でなかろうともご注意願います。
症状により5つのグレードに分けます。
グレード1 痛み。
走らなくなったり、散歩を嫌がる。抱っこしただけで痛がったりする。
グレード2 不完全な麻痺。知覚反応の軽度または消失。
後ろ足がふらつき、よろよろしている。
グレード3 麻痺、運動不能。浅部痛覚は有する。
後ろ足が動かせなく、立ち上がれない。
グレード4 麻痺、排泄障害、浅部痛覚がない。
自己の意思による排泄が出来なくなる。腰から下の感覚がおぼろげな状態。
グレード5 麻痺、排泄障害、深部痛覚の消滅。
腰から下が完全に麻痺し、動けなくなり、痛みさえも分からなくなる。
グレードにより内科、外科による治療法がありますが、回復の可否は早期治療に掛かっています。
椎間板ヘルニアは脊髄神経を圧迫している状態なので、時間が経つほど圧迫された神経は回復できない状態になります。
グレードの低い状態であるならば、ステロイド剤等を使用した内科処置と安静状態で回復できます。
グレード5の状態でも48時間以内に外科処置を行えた場合、2.5週間程で回復可能とのデータも出ています。
一刻も早い治療を出来るか否かによって回復のチャンスが大きく変わります。
時間との勝負が生涯を左右するのです。
常に様子に注意し、心当たりのある症状を発見しましたら、躊躇する暇もなく大至急安心できる獣医師の診察を受けて下さい。
あなたが動物病院に連れて行けるかどうかによって、大切なワンコが痛みを伴い回復厳しい状態のままでいることに繋がります。
診察費もお高くなっておりますが、早期発見・早期治療によって診察費を格段に下げることにもなりえます。
早期に治療することにより早期完治の可能性は高まり、あなたにとっても、愛犬にとっても幸せにつながります。
「しばらく様子を見よう」などと躊躇せず、早急に獣医師の判断を仰ぎましょう。
予防策としては、椎間板に負担を掛ける肥満の防止やジャンプや階段の昇り降りをさせないなどと言われております。
サプリメントも効果があると仰る方もおられます。
長時間のお散歩、ストップとダッシュの繰り返し、かけっこ(ダッシュ)、フローリングなどの滑りやすい床など、腰に負担が掛かる行為・運動は十分な注意を払ってください。
血統にもこだわり、万全の注意を払い飼育していても、何の理由も無く突如発症するケースも多いのですから。
繰り返します。
怪しいと感じる症状が出ましたら躊躇無く獣医師の診断を受けて下さい!!
私たちパピーズ・ママでは、命に携わるブリーダーとして遺伝の可能性が高いとされている以上椎間板ヘルニアを発症した父母犬からの繁殖は遺伝的素因を濃く持っている可能性が高いと判断しブリーディングを停止し、その子から産まれ嫁がせたお宅には注意下さる様ご連絡をさせて頂こうと思っております。
幸いに未だ椎間板ヘルニアを発症したことはございませんが。
パピーママとして出来ることならば生涯健康な体で生活してもらいたい。
ブリーダーの義務として少しでも危険性を排除するよう考えております。
2009.7/5