ハーブで染める。

伊良部島ハーブベラ畑
3.植物色素と、媒染剤。


草木染って、どうしていろんな色に染まるのでしょう。
植物色素のこと、媒染という工程の意味。
草木染めの原理について、ちょっと調べてみました。
(随時、加筆修正をおこなっていきます)


ややこしい話がキライなかたは、どうぞスルーしてください。
色素の分類

植物の持つ代表的な色素には、
フラボノイド、ベタレイン、カロチノイド、クロロフィル、の4種類のグループがあります。
フラボノイド アントシアニン 赤〜紫〜青の花、果実などの色。酸性で安定。
フラボン、フラボノール ほとんどすべての花に含まれる。気泡を多く含むため、光の反射により白く見える。
カルコン、オーロン ダリア、キンギョソウなどの黄色花の色。アルカリで濃色。
ベタレイン ベタシアニン アカザ科、ヒユ科、オシロイバナ科など、限られた科に分布。
2色が混合してさまざまに発色する。赤紫色はアントシアニンに似るが、化学構造が異なる。アントシアニンとは共存しない。
ベタシアニンはアルカリで黄色に変化。
ベタキサンチン
カロチノイド カロチン フラボンやフラボノールと共存する場合、こちらが発色源となる。
ニンジン、カボチャ、サツマイモ、シュンギクなどの色。
キサントフィル
クロロフィル クロロフィルa 高等植物から藻類にまで広く分布する。
葉緑体に含まれ、光合成に関与する。
クロロフィルb
フラボノイドベタレインは植物の液胞に含まれ、水溶性です。
カロチノイドクロロフィル色素体(葉緑体)に含まれ、水にはほぼ溶けず、脂溶性です。

ベタレインは水溶性ですが熱に弱いため、染色の色素としては安定しません。
草木染に使われる色素は、おもにフラボノイド類です。

クロロフィルは水に溶けないため、
草木染で緑色を得ることはできないというのがかつての常識でしたが、
昭和60年代、染色家の山崎青樹さんが、
若葉をアルカリ水で煎じることで緑色の染液を得る、画期的な方法を発見しました。

クロロフィルはアルカリによって加水分解されると、酵素の働きも加わり、
疎水性のフィトールという糖が切断され、水溶性クロロフィリドに変化するという原理だそうです。
さらにクロロフィル中のマグネシウムに置換すると色が安定するということで、
銅溶液で媒染すると、より鮮やかな緑色になります。



植物色素による染色の原理

植物を水で煮ると、組織・細胞の構造が壊され、水溶性色素が溶け出します。
別々の場所にあった色素や、酵素など他の成分が混ざり合い、相互に反応し、
色素の性質が変化します。

色素のうち、繊維に対して染着力をもつ物質を、染料と呼びます。
染料の分子と繊維の分子が、プラスとマイナスの電気的な引力やその他の引力で結合したとき、
染色という現象が起こります。

水溶性の染料分子は、多くマイナスの電気を帯びています。
繊維の分子にプラスの電気を帯びた部分があれば、「イオン結合」が起こり、
染料分子は水溶性の性質を失い、繊維に吸着します。

天然繊維はプラスやマイナスの電気を帯びていますが、、
絹・毛などの動物繊維を作るたんぱく質の分子に比べ、
綿・麻など植物繊維を作るセルロースの分子はプラスの電気が弱いため、
染料分子と十分な結合ができません。

そのため、植物繊維を濃く染めるために、事前に豆汁などに浸し、
たんぱく質を吸着させる作業が必要な場合もあります。(濃染処理)



媒染剤の役割と、種類

イオン結合は、水の中では水との結合と競合するため、
せっかく染まったものも洗濯などで色落ちすることがあります。

そこで染料分子と繊維分子の結合を強めるため、
金属陽イオンによって両者を仲立ちさせる操作を、媒染と言います。

一つの金属イオンに2〜3個の染料分子が結合することで、
不溶性で安定なキレート化合物(錯体)となって繊維に吸着するため、
洗濯しても容易に色落ちしない強固なものになります。

また、化合物の生成に伴って吸収波長が変化し、染料の色合いが変化します。

うちで主に使っている媒染剤には、以下のようなものがあります。
無色金属イオン アルミニウム ミョウバン 成分は硫酸カリウムアルミニウム。明るく、黄色っぽい発色。
木灰 椿の灰がアルミニウムを多く含むといわれる。
沖縄ではモクマオウなどの灰が使われるが、アルミよりもアルカリ分の作用が大きいかもしれない。
熱湯を注ぎ、2〜3日静置して上澄み液をとる。
動物性繊維の場合は、アルカリ分が繊維を傷めるため、使用注意。
チタン 植物により、明るいオレンジ色が得られる。(変化しないものもある)
有色金属イオン 木酢酸鉄 落ち着いたさび色が得られる。ごく少量でも反応するので、たとえば他のアルミ媒染をした布などに付着しないよう、注意して扱う。
青っぽい発色で、緑色の染色には欠かせない。
かつては硫酸銅などの劇薬が使われたが、近年は環境に配慮した媒染液が市販されている。(手作り液はかえって危険)
色調変化の傾向は有色金属イオンのほうが強いといえます。
無色イオンのアルミニウムでは色調の変化は小さく、もともとの色合いを保ち、より深めます。
チタンは無色ですが、染料によりオレンジ系の特殊な発色をします。

上記のほか有色イオンにクロム、無色イオンになどの媒染剤がありますが、
環境負荷や人体への安全性などの面から、うちでは使っておりません。

また、酢を使って発色させる場合もありますが、
金属イオンの働きではないため、厳密には媒染とは言わないようです。



1.草木染を始める前に。

2.植物色素と、媒染剤。

3.草木染の基本工程。

4.南の島の染材と、色。


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