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2007年1月28日
恩師の後ろ姿
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 「ナカジマ、今度三田に来るんやろ。そのあと飲みに行こう。だから電車で来い!」
そんな電話が中学時代の恩師である里則男先生からかかってきました。そして26日、三田・あかしあ台小学校の帰りに、恩師との久しぶりの“一杯”になりました。
 もうすぐ63歳になるというのに、昔と変わらず元気いっぱいの里先生に思いっきり笑ってしまいました。全然変わらないのです。ホンマアホですよあの先生はアハハハ。
 
 中学校3年の担任であった里則男先生は、私の拙著「教師力を磨く」の「終わりに(p329)」の部分に登場していますが、私に 「教育は足でかせぐもの」 を徹底して教えて下さった恩師なのです。私の26年間の教師生活を振り返ってみると、いっぱい里先生の真似をしているのです。5分間家庭訪問はもちろん、学級通信の書き方も一緒だし、一番しんどい子を大切にすることも里先生そのものなのです。
 「里先生は、直樹(仮名)をよく社会科教官室に呼んで勉強教えてはったでしょ。小学校のドリルをさせてたのを僕らも知ってましたよ」 「おまえらも生徒同士で直樹にいろいろ教えてくれてたな。あれはホント助かったぞ」 一杯飲みながらそんな話が飛び出してきました。
「里が、またムラを歩いてたぞ」 そんな噂もよく耳にしました。当時中3の私にはその意味はよくわからなかったのですが、後々になってこれが 「教育は足でかせぐ」 ということだと理解できるようになりました。
 
 里先生は、私たち3年4組の生徒が起こした事件のこともはっきりと覚えていました。
「アホ!忘れるはずないやろ。大変やってんぞ、職員室で。 俺、○○先生(学年主任)に怒られたわ。おまえらむちゃくちゃするんやからな。でもなあ、おまえら偉かったぞ」
 その事件とは、夏休み明けに起こりました。3年4組全員が、課題であった読書感想文の提出を拒否したのです。「先生たちは、全員に読書感想文を提出させるが、それはコンクールに出る作品を選ぶためのもので、ほとんどの作品は感想の一つも言ってくれないまま終わる。そんな意味のない感想文は提出しない」 と3年生9クラスの中で私たち4組だけが提出を拒否しました。こんな時、担任は 「気持ちはわかるが提出しろ」 が普通なのに里先生は 「わかった」 と一言でした。里先生は職員室では“針のむしろ”だったようです。27歳の青年教師が、15歳のわがまま生徒たちの味方になってくれたのです。
 それから私たちの取り組みが始まりました。41人全員が読書感想文を書きました。そしてそれを全員に回し、全員が感想を書きました。自分の読書感想文に40人の感想が書かれました。それはそれは大変な作業でした。「もうやめようや」「めんどくさい」そんな声も何度も聞かれましたが、なんとかやり通したのです。そして3ヶ月後の2学期末に、3年4組読書感想文集を作り上げたのです。つたない文、きたない文字だったかもしれませんが 「則男と41人の仲間たち」の最高の作品が出来上がったのです。私たち3年4組の誇りでした。
 そんな事件を振り返りながら、「生ビールもう一杯!」 の注文が続きました。
 
 里先生は、生徒をよく呼び出していました。放送で呼び出すこともあるのです。「3年4組ナカジマ君、職員室に来なさい」 って。 何を怒られるんやろ と緊張して行くと 「さっきのおまえの行動はよかったぞ」 と言うだけなのです。たった10秒で終わることをわざわざ呼び出して伝えるのです。でもこれがうれしいんですね。帰りの階段はおもわず2段ぬかしで上がっていってしまうのです。これが里流のほめ方だったのかもしれませんね。
 この夜は、帰る間際に
 「ナカジマ、おまえのいい所は “誠実で一生懸命なところや”」
ってほめて下さいました。 27歳の里先生と15歳の仲島が、62歳の里先生と50歳の仲島になっても、関係は今も同じなのです。 
 里先生、今夜はごちそうさまでした。
これからも“誠実で一生懸命” にがんばっていきます。  

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Posted by naka602 at 09:49 | TrackBack (0)
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