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2007年11月27日
幸せな時間
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 今から18年前、ちょうど昭和から平成になった年の3月、卒業式が終わってしばらくして、一人の男の子が小さな箱を持って、私に会いに来てくれました。箱の中には、自分で色をつけて作ったプラモデルが入っていました。それは当時私が乗っていた「真っ赤なホンダプレリュード」の模型でした。手紙も同封されていました。
 
「先生へ。 元気ですか。僕は元気です。卒業してからもう1週間もたちました。僕はもう中学生になります。先生に教えてもらったことを守っていきたいと思っています。プラモ屋さんに行くと売っていたので一生懸命つくりました。すみっこでもいいから、置いといてください。」
 
 彼は、ちょっとやんちゃだけど優しい子でした。 いろいろけんかもしましたが ホンマ「ええ奴」でした。卒業直前のある日、教室に行くと、そこには 「先生ありがとう」 とクラスのみんなが私に秘密で飾りを作ってくれていました。それだけでも涙が出そうなのに、私が教室に入ったとたんに、私の大好きだった 「♪未知という名の船に乗り♪」 の曲を全員で歌い出したのです。その時、彼は一番端で、涙をボロボロ出しながら私の方を向いて一生懸命歌ってくれていました。そんな彼の顔を見ると、もう私はダメでした。肩が大きくふれるくらい大泣きしてしまいました。
 
 その彼からもらった「真っ赤なホンダプレリュード」の模型は、18年経った今も私の机の上に大事に保管してあるのです。これは私の宝物であり、私の元気の素なのです。
 
 
 今日は、西宮市名塩の塩瀬公民館での、地元の幼稚園PTAが中心の子育て講演会でしたが、地域の方にも広報されていたようです。会場には、私の市教委時代の上司であった石田人権教育室長や、数年前に研修でお世話になった元名塩小PTAのお母さんたちも駆けつけてくれていましたが、他にも20年前の当時、名塩小学校で私が担任した学年のそれぞれの保護者も来てくれていたのです。1年担任時の覚前さん、5、6年担任時の松本さん、5年担任時の大久保さん、なつかしい顔が並んでいるではありませんか。そしてそして前から2番目の左端には、ナントナントあの彼がいるではありませんか。あのプレリュードの彼です。わざわざ来てくれたのです。その姿を見ただけで胸がいっぱいになりました。
 
 講演の最後は、いつもの通り「卒業試験」のお話です。実はこの「卒業試験」の子どもたちこそが、彼らなのです。彼の顔を見るとまた涙が浮かびそうになるので、違う方向を向いてしゃべりました。でも、話が終わったあと、やっぱり会場の皆さんに紹介したくて、彼のそばに行って、
「この子が、その時の子どもたちです。私の自慢の教え子です。松本年弘君です」
と紹介すると同時に涙があふれてしまいました。
 こんなに嬉しいことはありません。こんなに教師冥利に尽きることはありません。もう、むちゃくちゃうれしかったです。
 
 松本年弘30才。今は二人の子どものお父さんです。
「センセイ、今度メシ食いに行きましょう」
「おぉ、行こう。一緒に飲もうぜ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・本当に、幸せな時間でした。
 

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Posted by naka602 at 22:03 | TrackBack (0)
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