fjrigjwwe9r2mt_entry:entry_text 今日は地元西宮の小学校での授業研究会でした。 6年の道徳、授業者は井上八千代先生。かつて一緒に苦労を共にしていた同志です。そんな仲間だったということを差し引いても、今日の授業はすばらしかった。さすが八千代先生、さすがベテランの授業。 私と同い年の教師の頑張りに感動してしまいました。 こんな思い切った授業はなかなか見ることはできません。クラスで一番厳しい状況にたたされているA君だけのためにつくられた授業です。指導案も完全に「この子」のための指導案になっています。A君が顔をあげるための導入、A君が意見を言うためにつくられた展開、そして発問、A君が関心を持って読むためだけにもってきた資料。まさにA君オンリーの授業なのです。 A君は、それだけ厳しい状況の子どもです。680gという超未熟児で生まれたA君は、両親の深い愛情ではなく、まったく反対の虐待にあいます。あまりのひどさに保護そして施設で暮らします。そんなA君が4年生にこの学校にやってきます。でも焦点が定まらない目つき、落ち着きもなくすぐにキレる。暴力的な言動に先生方は振り回されます。そんなA君が6年生になり、まだ問題を起こしつつも少しずつ落ち着き、頑張る子に成長してきました。卒業まであと30日程、優しい仲間に支えられ「いい顔」で卒業式を迎えることでしょう。でも中学生になり、勉強面でも生活面でも苦しい場面に出会ったとき、再び爆発する可能性は大です。まだまだ心配なA君なのです。そんなA君に送る授業「一度しかない自分の命(時間)」でした。 97歳の現役医師の日野原重明さんの「命の授業」が基になっているですが、 「心を育てるとはどういうことなのか?」 そんな発問にA君は、しっかり考えようとします。 「頑張りたいという心に、意識を保てない自分を乗り越えることが、心を育てること」 語彙力も不足しているA君が、一生懸命に言葉をつないでこんな発言をしたのです。 そんな発言に先生は大きくうなずきます。 「生きていくために必要なことは、呼吸、食事、そしてほかには?」 という発問に、多くの子が「睡眠」と答えます。 でも家族と離れ、祖母に育てられているB君は 「人を大事にすること」 その発言にA君は大きくうなずきます。 「心を育てるためにしないといけないことは?」 「くじけないことが大切」 「あきらめないことが大切」 「がまんすることが大切」 でもいじめを受けたことのあるC君は 「人に頼ることも大切」 そんな発言にみんなもうなずきます。 A君のために作られた授業は、実はみんなの心にも大きく響いているのです。 黒板に日野原重明さんの言葉が張り出されます。 「人は一人では生きていけない。生まれてここまでいろんな人に支えられて生きている。いろんな仲間に支えられている。そのことに感謝し、いつか大人になって仕事につけば、今度はみんなが社会を支えていく。人が人を支える。この地球を含め、すべてのものを大切にする。自分より弱いものに手をさしのべ、一緒に生きていく。心を育てるとはそういうことだ。また 『何かを強く思う、考える』 このことをしっかりやっていくと心が育つんだ」 井上先生の「A君を育てたい」という強い思いが、こんな授業を生み出したのです。 授業後、井上先生は言いました。 「中学に行っても、彼のことをずっと見守り続けたい。 きっと仲間も彼のことを支えてくれるでしょう」 これが本物の授業だ、これが本物の教師だ、 と、私は思うのです。
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