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2013年3月7日
私もなかなかいい人やん
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―「きづき」165号(2013.3)「羅針盤」原稿―

 「私もなかなかいい人やん」

            教育サポーター  仲島 正教

 

☆命の使い方

 もしあなたの目の前を、目の不自由な人が歩いていたらどうしますか?私は躊躇なくそばに駆け寄り「どちらに行かれますか?大丈夫ですか?」と声をかけます。先日も梅田地下街で混雑する人通りの中を歩いている方を見たので声をかけ、一緒に地下鉄乗り場まで歩いてきました。仕事へは少し遠回りになりましたが、なんだか気持ちがいいのです。

 101歳の医師日野原重明さんは小学生への授業の中でこう言いました。「命とは、自分の持っている時間であり、それをどう使うかです。その使い方は『自分のために使う』『人のために使う』の2通りです。あなたはどう使いますか」

 

☆思っているだけでは変わらない

 学級担任をしていた時、子どもたちによくこんな話をしました。「仲よくしたいとか助けたいと思うことは誰でも出来る。でも思っているだけでは何も変わらない、一歩踏み出すことだ」。すると、給食当番で重たい食器を持っている子のそばに行き、一緒に持ってくれます。算数の時間には、解けなくて困っている友達のそばに行き、優しく教えてくれます。そんな行動をした子は、みんないい顔をしています。助けてもらった子もいい顔です。そこに温かいつながりが生まれます。

 立場の弱い人に「してあげた」というと「上から目線」だからよくないという人もいますが、私は大いに「してあげた」の体験をしてほしいのです。きっかけは上から目線でいいのです。でも続けていくと、実は「してあげた」行為は、自分も幸せな気持ちにさせてくれて「こちらこそありがとう」になるのです。心理学ではそれを「多幸感」というそうです。「情けは人の為ならず」とは「親切は人の為ではなく、巡り巡って自分の為になる」という意味の諺ですが、こういう行為をすることで「私もなかなかいい人やん」と自己肯定感が高まり、自分を好きになり、自分を愛せるようになるのです。そんな多幸感を持った子どもたちは友達をけっしていじめたりしません。

以前、教師をめざしている学生たちに「電車では席を譲ろう」と呼びかけました。たとえ自分がどんなに疲れていても、お年寄りに席を譲り「ありがとう」と言われれば、疲れも和らぎ、さわやかな気持ちになりますよと。これにはみんな同意してくれたのですが、学生の中には「私は年寄りだから席を譲りなさい。譲って当たり前だ」っていう態度の人を見た時は「寝たふり」をしますと言うのです。私も過去にはその学生と同じ気持ちになり、寝たふりをしたことがあります。でも寝たふりをした自分は心の中で小さな痛みを感じています。しかしそんな人にでも席を譲った自分には心の痛みはありません。どちらが気持ちがいいでしょう。私は後者のような人になりたいと思うのです。

 

☆いじめや差別をする人は自己肯定感が低い

昨年来、いじめや体罰等の報道に心が痛みました。いじめや体罰はなぜ起こるのか。それは人を下に見て、自分を優位にしたいという気持ちの表れなのかもしれません。これも「上から目線」です。しかし前述の「上から目線」と決定的に違うのは、相手に対して感謝の気持ちがないということです。相手を敵視し傷つけることによって、自己肯定をしようとしているのは、裏を返せば自己を否定し、自己を傷つけているのです。

インターネットの書き込みを見ていると、匿名をいいことに相手を誹謗中傷し差別的な記述に出くわすことがあります。そうすることによって自分を正当化しようとしているのでしょうが、実は人を傷つけること以上に自分を傷つけているのです。そこには本当の自己肯定感や多幸感は生まれないのです。

 

☆差別の解消に向けての一歩

西宮市では同和教育の文字が人権教育に変わって10年が過ぎました。しかし同和問題をはじめまだ差別の現実は残っています。「人権文化の花さくまち西宮」をめざし、今後ともしっかりと勉強し取り組んでいく必要があります。多くの方々に学校や公民館の講座や研修にも参加してほしいと思っています。

その道中で、目の不自由な人に出会ったら、声をかけてみませんか。電車やバスでは席を譲ってみませんか。寝たふりするよりも気持ちがいいですよ。そして「私もなかなかいい人やん」と自分で自分をほめて、幸せな気持ちになってみませんか。その一歩が差別の解消に向けての一歩だと私は信じているのです。さあ一緒に気持ちよくなりましょう。

 

 

※日野原重明「いのちのおはなし」(講談社2007

※植木理恵「本当にわかる心理学」(日本実業出版社2010

 

 

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Posted by naka602 at 08:44 | TrackBack (0)
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