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2020年8月24日
あふれでたのはやさしさだった
10年ほど前に友人に連れられ「奈良少年刑務所」を初めて見た時、「なんて素敵な建物だろう。これが刑務所?」と驚いたことを今もよく覚えています。そして近くに明石家さんまさんの実家があるのも教えてもらいました。

その「奈良少年刑務所」の受刑者とある作家の授業のやり取りの様子が
書かれた本があります。

「あふれでたのはやさしさだった 奈良少年刑務所 絵本と詩の教室」
        寮 美千子・著  西日本出版社2018
作家(童話・小説・絵本)である寮美千子さんが、引っ越し先の近くにあった
奈良少年刑務所の矯正展にたまたま行ったことがきっかけになります。
そこで偶然出会った教官とのつながりから、寮さんが少年たちに
「絵本と詩の教室」をすることになったのです。

巻頭に書かれている寮さんの言葉です。

刑務所に入るような人は、がさつで凶暴な人だろう。
何を考えているかわからない恐ろしい人に違いない。
漠然とそう思っていた。
ところが奈良少年刑務所で出会った少年たちは、まったく違っていた。
想像を絶する貧困の中で育ったり、親からはげしい虐待を受けたり、
学校でいじめられたり・・・。みんな福祉や支援の網の目からこぼれ続け、
加害者になる前に、被害者であったような子たちだった。
それぞれが自分を守ろうとして、自分なりの鎧を身につけている。
いつも無意味に笑っている、わざとふんぞりかえる、
殻に閉じこもる、くだらない冗談を連発する、妙に姿勢がいい・・・。
千差万別のその鎧は、たいがい出来がよくなくて、
自分を守るよりも、自分を更なる窮地に追い込んでしまう悲しい代物だった。
それも仕方ない。周囲に助けてくれる大人もいない中、
幼い彼らが必死で考案し、身につけてきたものなのだから。
そんな彼らは、心の扉を固く閉ざしていた。自分自身の感情もわからないほどに。
けれども、その鎧を脱ぎ捨て、心の扉を開けたとたん、
あふれでてきたのは、やさしさだった。
重い罪を犯した人間でも、心の底に眠っているのはやさしさなんだ。
ほんとうはだれもが、愛されたいし、愛したい。人間って、いい生き物なんだ。
彼らに出会って、私はそう確信するようになった。
心の扉を開いた鍵は「詩」。そして受け止めてくれる「仲間」の存在。
「自己表現」+「受け止め」は、傷ついた彼らの心を確実に癒していった。
2007年から足かけ10年、「社会性涵養プログラム」の一環として、
奈良少年刑務所で行なってきた「物語の教室」の軌跡を記した。
奇跡だと思ったけど、違った。186名、一人として変わらない子はいなかった。
彼らのほんとうの姿を、この記録を通じて、知っていただければ、幸いです。
                      寮 美千子


読み終わったあと、温かいものが体中を流れました。
なんて素敵なんだ、なんて優しいんだ、これが愛なんだ、
自然に流れる涙に自分自身が癒されていきました。

昨年話題になった「ケーキの切れない非行少年たち」と共通する部分も
あるのですが、読後感はずいぶん違います。


「あふれでたのはやさしさだった」
まず一番に先生方には読んでほしいし、
今、学校に関わっているサポーターや協力員さん、地域の民生児童委員さん、
補導員さん、保護司さん他多くの人にも読んでほしい本です。
もちろんPTAやお母さんお父さんもです。
ぜひ多くの人に読んでいただき、感じてほしいなあと思っています。



※あわせてこんな本も読みました。
「おおかみのこがはしってきて(絵本)」文・寮美千子 画・小林敏也
「世界はもっと美しくなる 奈良少年刑務所詩集」 編・寮美千子
「空が青いから白をえらんだのです 奈良少年刑務所詩集」 編・寮美千子






Posted by naka602 at 22:10 | TrackBack (0)
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