避妊・去勢どうしますか?
大変難しい問題と考えます。
どちらにも、メリットとデメリットが存在するから。
特に避妊去勢の手術を選択してしまうと元には戻らなくなるからです。
獣医師によっても是非が分かれています。
避妊去勢をしない場合。
男の子でしたらマーキング、女の子でしたら年2回の生理が来ます。
躾やその際の管理によって気にならない方も多くいらっしゃる程度の問題ではないのでしょうか。
ドッグランやドッグカフェで遊べなくとも我慢できます。
最大の問題が妊娠でしょう。
お庭で飼育している場合、少なくはなりましたが野良犬や脱走した男の子が生殖行動をして
くれる場合が考えられます。
大体において生まれる子はミックス犬。奇跡のように犬種は一緒だとしても血統書など申請で
きません。
今どき、里親探しも不自由します。
男の子は大型犬で、女の子は小型犬の場合、サイズが違いうまく交配ができない場合もあります。
そんな時、男の子がいじれてしまい女の子に牙を剥くことも…
室内飼育の場合、遺伝情報、遺伝疾患等確認してありますか?
里親さんは見つけられますか?
他、女の子では避妊手術において卵巣や子宮まで切除することによって女性疾患が発症しなく
なります。
避妊去勢手術を施した場合。
ホルモンのバランスを崩すと言われます。
太りやすくなったり、女の子は性格が少し強くなったりすると言われます。
皮膚病を発症する率も上がると言われます。
あなたの心が変わって、赤ちゃんを望まれても戻せません。
手術の危険性も心して下さい。
僅かですが手術による後遺症や死亡例、麻酔により目覚める事が無かったなど聞かない話
ではございません。
避妊去勢の手術代も獣医師によって違います。
数万円は覚悟下さい。
お住まいの市町村によっては補助金が受けられる地域もございます。
手術を選択なさるのであれば、男の子ならマーキングを覚える前が良く、女の子なら早めの
手術が疾病を発症しにくくなるとされます。
獣医師によって手術の日(生後何日)が違いますので、ホームドクターとご相談下さい。
どちらにしても、あなたが考え決めることです。
大切な我が子の為に、じっくり考えご決断下さい。
先日、この様なニュースに驚かされました。
米ロサンゼルス市議会はこのほど、生後4カ月目までにペットの犬や猫の不妊あるいは
去勢手術をするよう飼い主に義務付ける条例案を可決した。同様の条例は小規模自治体
では導入例があるが、約400万人の人口を抱えるロスのような大都市での施行は米国内で
初めてとなる。
(時事通信社 - 02月16日 07:03) 著作権法第32条より「引用」
先般より、このような条例が議会に提出される話はいくつか聞いておりました。
それでも、健康な体にメスを入れることを疑問に感じる方や、宗教教義やポリシーによって避妊
去勢を強いることへ否定的な方、手術を行うことによる麻酔剤の危険性やホルモンバランスの
異常に危惧を感じる方、愛する子の血統の繋がった子孫を望む方、強制力のある法的な施
行に嫌悪を感じる方などから強固な反対が起こり、否決なり保留されると思っておりました。
しかし凄い事が起こりました。
一般的にも動物愛護を重視するお国柄であり、ある面では過剰なほどの行動や考えを押し付ける
などの嫌らしさを感じることもあるのですが決まりましたね。
ロサンゼルスほどの大規模な都市で成功を収められれば、犬猫の処分に困っている他の自治体も
こぞって模範していくでしょう。
考えもない繁殖は起こらなくなります。
過剰となる仔犬は産まれなくなります。
生殖行動すら人が管理することの善悪はあるでしょうが、人間が邪魔となったワンコは殺処分す
るなどと言う行動が減る可能性があるのならチャレンジしても良いのではないでしょうか。
かのロサンゼルスでも年間に数万匹は動物収容所で殺処分されているようです。
条例案を提出したアラルコン市議は「不妊義務化でその数を減らすことにより、ロスは人道的な
街になれる」と主張されています。
「早い時期の手術はペットの健康を害する」の意見があるようですが、確かに生後4ヶ月までの
手術とは早い気が致します。
チワワ(ティーカップサイズ)などの犬種の場合、私達が嫁がせる際にも生後3ヶ月以上までお
待たせする場合もしばしばあるほどですから。
大型犬の多いアメリカならではでしょうか。
獣医師を含めた検討が必要です。
また、ワンコが種として消え去ってしまう可能性もあります。
ワンコは既に人間にとって掛け替えのないパートナーです。
ニーズに合った頭数の作出と、遺伝性疾患の排除されたブリーディングは更に重要となり必要と
なります。
国家による資格試験を通った者だけに絞り込んだブリーディングのライセンス発行も合わせてお
こなわなくてはなりません。
さすれば、知識もなく、学ぶ気もなく、現業として営み生活の糧としているだけの理由の繁殖屋
は廃業に追い込まれても仕方ないとしましょう。
ブリーダーより麻酔や薬に弱いとか、子宮膿腫や癌などの疾病で出やすい等血統的な情報を集め、
正否、善悪は飼い主さんである彼方がしっかり考え、お決めになること。
ワンちゃんを守ることは飼育者である彼方の義務です。
2008.3/28
日本の獣医師会による絶対的な統一指針は出ていません。
と言うことは、各獣医師によって考え方や手術方法、手術費等が異なる訳です。
海外の獣医師では更に考え方が異なっている場合が多くあります。
自身で納得でき信頼できる獣医師に確認を取り、不安を覚えるようでしたら他の獣医師に
よるセカンドオピニオンも必要です。
獣医師の中にも以下の様な見解を持つ方もおります。
性ホルモン(男性ホルモン・女性ホルモン)を分泌する臓器(睾丸・卵巣・子宮)の除去手術を
簡単に薦める去勢・不妊手術は大きな疑問を持つというのです。
安易に考え手術してしまえば復元は出来ないことを再認識すべきと提言しています。
去勢・避妊手術を行う目的と理由を明確に表し再認識させます。
1 産児制限 (お産が面倒、お産が可哀想等)
2 優性保護 (遺伝性疾患因子を保持している事が判明している)
3 飼い主の勝手(発情期の出血、吠える、気性の荒さ、スプレイ等の煩わしさ)
4 獣医学的視観(乳腺腫瘍・前立腺肥大・肛門周囲腺腫瘍・癌の発生を防止、子宮蓄膿症
の防止、気性の激しさの緩和等)
去勢・避妊手術の方法
・去勢手術/牡
1.両睾丸の摘出手術 (男性ホルモン分泌不能・精子造成不能) 更年期障害有り
2.両睾丸の精管の結紮切断 (男性ホルモン分泌温存・交尾受精不能) 更年期障害無し
・避妊手術/牝
1.子宮・両卵巣全摘出 (女性ホルモン分泌不能・欠如 不妊) 更年期障害有り
2.子宮・一側卵巣摘出 (女性ホルモン分泌能有り 不妊) 更年期障害無し
3.子宮のみ全摘出 (女性ホルモン分泌能有り 不妊) 更年期障害無し
4.両卵巣のみ全摘出 (女性ホルモン分泌不能・欠如 不妊) 更年期障害有り
ホルモンの知識
卵巣からのホルモン分泌
・発情ホルモン (エストロゲン)
卵巣の発育卵子から分泌するホルモンで牝性器の発育や牝らしい性質を育成する。
・黄体ホルモン (プロゲステロン)
卵巣の卵子を排卵し、黄体を形成し黄体ホルモン分泌する。
乳腺の発育、妊娠の維持、泌乳の準備をする。
睾丸からのホルモン分泌
・男性ホルモン (テストステロン)
睾丸で分泌するホルモンで、精子を形成し、牡性器の発育、牡らしい性質を育成する。
副腎皮質からのホルモン分泌
・副腎皮質ホルモン (コルチゾール)
副腎皮質細胞から分泌するホルモンで生命維持に欠かせない貴重なホルモン
甲状腺からのホルモン分泌
・代表的にサイロキシンと呼ばれているホルモン
生体のエネルギー代謝に深く関係しているホルモンで、体温、呼吸、心臓機能、心拍、色素、
被毛の成長、光沢、脱毛、生え変わり、皮膚等に深く関係。
各ホルモンが正常に分泌されることにより健康が維持出来る仕組みになっています。
しかし去勢・不妊手術によりホルモン分泌が無くなることでバランスが崩れ、他のホルモン分泌腺に
負担が掛かる結果、皮膚病等の疾病が起こります。
去勢・避妊手術とホルモン〜疾病への関係
・去勢不妊手術の結果、性ホルモンが欠如し、甲状腺機能低下が起こり、甲状腺低下性
皮膚病が発症する。
・去勢手術により、男性ホルモン失調を起こし、男性ホルモン欠乏性皮膚病が発症する。
・不妊手術により、女性ホルモン失調を起こし、女性ホルモン欠乏性皮膚病が発症する。
去勢・不妊手術は副腎ホルモンの生産・分泌不全を起こし副腎不全性皮膚病を誘発させ、下垂体メ
ラニン生産細胞ホルモンの不全を起こし皮膚色素沈着性の各種皮膚病を誘発する原因を育成する。
ホルモンの分泌不全による病気
・男性ホルモン欠乏 (男性更年期が発生し元気低下、肥満体化)
・女性ホルモン欠乏 (女性更年期が発生し元気低下、肥満体化)
・甲状腺低下症 (性質穏和、被毛乾燥、脱毛、色素沈着、心拍低下)
・副腎皮質低下 (肥満体化、背中の脱毛、色素沈着、皮膚病を誘発)
・黄体ホルモン過剰による子宮蓄膿症
去勢・不妊手術についてのインフォームドコンセント(獣医師から正しい情報を得た上での合意)
1.去勢・避妊に付いて細かい説明が有りましたか?
2.メリット、デメリットに付いて細かい説明が有りましたか?
3.手術方法に付いて細かい説明が有りましたか?
4.危険性(麻酔、手術リスク、疾病の発生等)に付いて説明が有りましたか?
5.手術費・治療費等に付いて説明が有りましたか?
6.食事管理に付いて説明が有りましたか?
正直に申して、現在は保健所や動物愛護セーター、獣医師、ペットショップやブリーダーなどの大半は去勢・避妊手術に付いて賛成の意見を持っていると思います。
生まれてきた子犬の飼育者を見つけられないことによる殺処分の減少を目論んだり、過剰な出産頭数の調整や、危険な素人繁殖や自然繁殖を減らすことなどを目的に進められていると思います。
ただ手術を行えば二度と元の体には戻りません。
デメリットもあることを十分承知してください。
他人に進められたからとか、皆が行っているから去勢・避妊手術を行うのではなく、獣医師によるインフォームドコンセントをしっかり受け、利益項目と不利益項目を理解し、ご自身とご家族が納得してから行う様にしてください。
2010.6/17