ダップルの恐ろしさはインターネットで検索するだけで簡単に多くの情報を得られるようになりました。
ダブルダップルを作出する可能性の高いダップル同士の交配は絶対に忌避すべきと愛犬家の常識になりつつあると思っています。
それでもまだダブルダップルのパピーが産まれている・・・。
なぜでしょう?
独特の美しさを持つ被毛に魅せられ子犬を購入する際にダップルを選択する方が多いからなのでしょう。
ダップルコートも一時の高額な生体価格からリーズナブルな価格に下がりました。
公園やドッグランでもダップルコートのワンコを当たり前のように見ることができるようになりました。
生体数が増えると、牡牝を未去勢・未避妊状態で飼育しているお宅での自然交配の確率が高まります。
我が家の可愛いワンちゃんの子孫が見たいので繁殖させようと言う自家繁殖も進みます。
せっかく牡牝を飼育しているのだからお小遣い稼ぎに繁殖しようと言うバックヤードブリーダーも現れてきます。
ダップル同士の交配が起こればダブルダップルの作出数が増えるわけです。
先日、ダブルダップルのダックスフンドを飼育されている方からメールを頂きました。
当ページに掲載されている写真のテリー君です。
ダップルの怖さを広く伝えて欲しいと飼い主様のご希望によりお写真を掲載するご許可を得ることが出来ました。
お知り合いのお宅で生まれた子だそうです。
人間家庭のイメージを持ってせっかく飼うなら男の子と女の子が良いと考え、特に目に見える必要性を感じなかったので去勢避妊をすることもなく、赤ちゃんが授かるならそれもありがたい程度にしか考えないままで牡牝の複数頭飼育をした結果なのでしょう。
ダップルが原因と推測できる障害の内、この子には視覚・聴覚障害が確認できます。
小眼球症で眼圧はかろうじて測定できるくらい。
右目は下1/3に瞬膜の癒着があり、進行性網膜萎縮もあります。
虹彩の色はブルー。
獣医師は「見えているのではなく光と影で判別しているのではないか」と言います。
左目は黒目がありません。
眼球全体の瞬膜が癒着しています。
聴力はないですが骨伝導で大きな音とかは伝わるので多少は音を感じているそうです。
現在、内臓疾患や脳神経障害等は確認していません。
今後いかなる障害が発症するか、早死する可能性が有るかなどは神のみぞ知ることとなります。
犬が視覚や聴覚を失うことの厳しさは想像も付きますか?
この子のご先祖は視聴覚を頼りに野山を駆け回り獲物を追い求めたハンターなのですよ。
それでもこの子は頑張っています。
障害を承知している飼い主さんに支えられ、出来る限りの治療を受けながら、障害に負けることなく、一生懸命に生きようとしています。
悲しいことはただ1つ。
この子を生み出したのは人間によるものと言うこと。
もう少しダップルの怖さを教えてあげたり、知識を得るだけでこんな障害は簡単に防げたこと。
ダップルの危険性が広く知れ渡ってきたとは申せ、まだまだ伝わっていない方も多くおられます。
障害を持って生まれてしまったからでは取り返しが付かないことなので、益々告知・啓蒙をしなければならないと決意しました。
繁殖やカラー遺伝等のブリーディングに関する知識は素人よりマシという程度の驚くような獣医師が意外と多くおられることに驚きます。
「我が家で飼育している牡牝から子犬を産ませてみたい」と掛かり付けの獣医師に相談するとレントゲンを撮ってくれ、骨盤の大きさから「問題なく元気な子犬が生まれますよ!」と教えてもらえたと言う話を何度も聞いたことがあります。
産科、骨学的に健康な子犬が期待できると言う話もありがたいのですが、妊娠・出産の前に出産の危険性や遺伝上の諸問題、子犬の行く末などを信頼される専門家として熱心に教える必要が有ると確信しています。
私どもも含め犬の飼育者は絶対的な信頼を持って獣医師の言葉を信じ対処します。
その獣医師の中で知識をほとんど持っていない方がいるとは・・・。
未去勢・未避妊の雄雌を飼育していることを承知している獣医師ならば、交配〜繁殖に関して指導すべき(特にダップルやパイボールドの飼育者には)です。
素人の飼育者にダップルの危険性を告知・啓蒙するよりも、掛かり付けの獣医師が日頃より注意しダップルの危険性を説く方が一般飼育者にも良く伝わり、ダブルダップルの繁殖を阻止できると考えます。
明らかに証明されていることで犬に負担を掛けることとなるダップル、パイボールドの繁殖は絶対に行ってはいけません。
愛犬家と自負するのであるならダップルの血統を根絶させる為に、購入を勧めたり、ブリーディングを行うことは慎んでください。
ダップルの危険性を承知しながら購入したり、繁殖した者に対して、私たちはあえて「動物虐待」と思わせてもらうこととします。
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