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2011年11月18日
カムバック東井義雄
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大阪市長選挙が大きな話題になっています。
私は、元大阪市民として、一人の教育者として、一人の人間として
今回の選挙がとても心配です。
 
そんな中、東井義雄先生(1912〜1991)のことを思い出しています。
私は、4年前に、そんな東井義雄先生の本のことについて、少しコメントを雑誌に
書かせていただきました。
 
 
 
 

体育科教育(大修館書店)2007年5月号  

「私の思い出の一冊」

                    仲島 正教

 

東井義雄著作集(10)

〜東井義雄著 明治図書1972年初版〜

 

私は、ドラえもんの「どこでもドア」を使っていいなら、東井義雄校長の八鹿小学校に行ってみたい。

子どものために学校があり、子どものために教師があり、子どものために教育があるのだと子どもを第一義にすえる東井義雄校長。

どこを読んでも温かくて優しくて元気になるそんな「私の思い出の1冊」を紹介したい。

本書(10巻)は東井義雄氏の「村を育てる学力」をはじめとした著作を7巻にまとめ、別巻として「培其根(ばいきこん)」が3巻に収められている。

本書の出版から35年が経ち「東井義雄」の名前すら知らない教師がだんだん増えてきたが、今読み返してもまったく古さを感じない。むしろ教育混迷の今こそ「プレイバック東井義雄」と私は叫びたい。

格差社会、勝ち組負け組、学校選択制、教育にも競争原理、いじめ、自殺・・・そんな言葉が飛び交う世の中、改めて東井義雄氏の言葉を読み返してみる。本書にはこんな文が載っていた。

 

勉強意欲をそそるのに一番効き目のあらわれる方法は「競争」という方法である。どんなぼんやりした子どもでも競争さてみると眼を輝かせてくる。しかしこれは薬でいえば「トンプク」である。常用すべきものではない。うっかりしていると副作用を起こしかねない。互いに相手を目の上のこぶとし、あるいは軽蔑し、突き落としあい、人の失敗をほくそ笑むような副作用を、である。もちろん、この世界にはいたる処に「競争」がある。「競争」は生きとし生くるものの宿命かもしれない。そしてまた、人類のここまでの進歩は「競争」のおかげだったのかもしれない。しかし、だからといって、私たちは手放しで「競争」の意欲を育て、「生活の論理」を「競争」で貫かせていいものだろうか。「競争」を超克しながら、手をつなぎあうという方式で人間の幸福を築き得る新しい秩序が可能なのではないだろうか。

 

また「村を育てる学力」の書き出しには「私たちの夢」という詩があるが、

その後半部分を抜粋する。

 

みんなが手をつなぎ、みんなが助け合い

一人の喜びをみんなも喜び

一人の悲しみをみんなも悲しみ

わけあい、力になりあい

いばったり、いばられたりすることをなくし、

ばかにしたり、ばかにされたりすることをなくし、

男も女も、年寄りも子どもも

どんな仕事をする人も

思う存分生きられるような

そんな村にすることは

もっともっと大事だなあ

私たちはいつもそう思う。

 

現在手に入る東井義雄氏の本はわずかしかない。この著作集もすでに絶版となっているが「培其根」については、東井義雄記念館(兵庫県豊岡市)に行けば、復刻版(5000円)が手に入る。森信三氏は「我が国教育界が永く後世に伝えるべき至宝」と培其根のことを紹介している。若い教師にはぜひ読んでほしいと思う。

最後に、東井義雄校長のもとで働いていた足立威宏先生とある女の子の言葉を引用したい。

          

  東井義雄校長先生に一度でもお仕えしたことのある人ならば、誰でも、自分が一番先生に可愛がっていただいていた、わかっていただいていたという思いをもっているにちがいない。教頭さんも、学級担任も、事務や養護の先生も、用務員さんも、短気なものも気長なものも、いそがしいものも、ゆっくりものも、男も女も、そしてもし、あるならば、運動場の小石も、いちょうの木も、廊下のゴミも、中庭の水槽の亀も、椅子も、そこに掛けてある雑巾も・・・。

もちろん私もその中のひとりである。

  私が冬の朝、教室の廊下のふきそうじをしている時でした。校長先生がまわってみえて「お湯もらってそうじしているんだろうな」と言って、バケツに手を入れてみてくださいました。そしたら冷たい水だったので「えらい冷たいお湯もらっとるんやなあ、霜やけにならんようにしてよ」と言って、私の手を両手ではさんでぬくめてくださった。校長先生、私はあのことがわすれられません

 

やはり、私はドラえもんの「どこでもドア」がほしいのである。

 

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Posted by naka602 at 08:13 | TrackBack (0)
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