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2012年9月10日
はやくはやくっていわないで
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作・益田ミリ 絵・平澤一平
「はやくはやくっていわないで」  (第58回産経児童出版文化賞受賞)
この絵本の中に、小さな紙がはさんでありました。
そこには作者の益田ミリさんの文が書いてありました。
 
 
 わたしの心を温かくしてくれる思い出のひとつに、小学校一年生のときの教室での
できごとがあります。
 その日、クラスのみんなでクジ引きを引くことになりました。なにをもらうためのクジ
だったのかは忘れてしまったけれど、楽しい雰囲気だったから、きっとレクレーションの
時間だったのでしょう。
 担任は若い男の先生でした。順番にクジを引きなさいと先生が言ったので、
生徒たちはいっせいに前に走っていきました。
 だけど、わたしはグズグズしていて出遅れてしまった。クラスメイトの中で一番ビリ。
 こんな最後に並んだら、もういいものなんてもらえない・・・・・。
 そう思うと悲しくて、せっかくの楽しかった気持ちもしぼんでしまったのです。
 すると、思ってもみないことが起こりました。先生がわたしのところにやってきて、
みんなの前でこう言ったのです。
「一番最後に並んでえらかったな」
 わたしは先生に誉められてびっくりしました。びっくりしたけど、すごくうれしかった。
うれしくて、うれしくて、もう35年も昔のことなのに、思い出すと今でも温かい気持ちに
なるのです。
 先生は、最後の子供までちゃんと見ていて、待っていてくれた。はやくはやくって
言わないで、待っていてくれたのです。
 励まされたり、なぐさめられたり、人はたくさんの言葉を受け取って前に進んでいく。
でも、一番うれしいのって、誰かが待っていてくれたことじゃないかなと
わたしは思うのです。
 
 ながく読みつがれる絵本になることを願って。    
                   
                               2010年10月  益田ミリ
 
 

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Posted by naka602 at 23:20 | TrackBack (0)
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