fjrigjwwe9r2mt_entry:entry_text 作・益田ミリ 絵・平澤一平 「はやくはやくっていわないで」 (第58回産経児童出版文化賞受賞) この絵本の中に、小さな紙がはさんでありました。 そこには作者の益田ミリさんの文が書いてありました。 わたしの心を温かくしてくれる思い出のひとつに、小学校一年生のときの教室での できごとがあります。 その日、クラスのみんなでクジ引きを引くことになりました。なにをもらうためのクジ だったのかは忘れてしまったけれど、楽しい雰囲気だったから、きっとレクレーションの 時間だったのでしょう。 担任は若い男の先生でした。順番にクジを引きなさいと先生が言ったので、 生徒たちはいっせいに前に走っていきました。 だけど、わたしはグズグズしていて出遅れてしまった。クラスメイトの中で一番ビリ。 こんな最後に並んだら、もういいものなんてもらえない・・・・・。 そう思うと悲しくて、せっかくの楽しかった気持ちもしぼんでしまったのです。 すると、思ってもみないことが起こりました。先生がわたしのところにやってきて、 みんなの前でこう言ったのです。 「一番最後に並んでえらかったな」 わたしは先生に誉められてびっくりしました。びっくりしたけど、すごくうれしかった。 うれしくて、うれしくて、もう35年も昔のことなのに、思い出すと今でも温かい気持ちに なるのです。 先生は、最後の子供までちゃんと見ていて、待っていてくれた。はやくはやくって 言わないで、待っていてくれたのです。 励まされたり、なぐさめられたり、人はたくさんの言葉を受け取って前に進んでいく。 でも、一番うれしいのって、誰かが待っていてくれたことじゃないかなと わたしは思うのです。 ながく読みつがれる絵本になることを願って。 2010年10月 益田ミリ
fjrigjwwe9r2mt_entry:entry_text_more
|