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2014年4月12日 |
母は・・・ |
「 受験旅行の答えが聞けたら 」 娘との受験旅行のため、インターネットでホテルや交通機関の空き状況を確認していて、30年前の母と私の経験を思い出した。 関西の大学を受験すると決めたのは私だったが、あとの手配はすべて母任せだった。電車や新幹線の乗り継ぎはスムーズで、旅館や大学にも迷わずたどり着いた。インターネットもない時代に、母はどうやって行程を組んだのだろう。 そしてもう一つ、不思議なことがある。受験の日、目覚めると旅館の窓の外は一面の雪だった。出かけていた様子の母が戻ってきて「普通の靴で出かけるのは無理やろう」と真新しい長靴を差し出した。その時私は、何の疑問も持たなかった。受験のことで頭がいっぱいだったし、母が何でもしてくれて当然だと思っていたのかもしれない。土地勘もない町で、店も開いていない時間に、母はどこで長靴を買ってきたのだろうと思ったのは、随分後になってからである。 2年前に脳梗塞を発症した母は、話すことも、文字の読み書きもできなくなった。何を聞いてもほほえみながらうなずくばかりである。ずっと聞きそびれて答えは、もう永遠にわからないのかもしれない。 (長崎市 木戸知子 48歳) |
4月12日 朝日新聞 「ひととき」 より
Posted by naka602 at 18:41
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