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2018年1月8日
佐渡 裕 「棒を振る人生」
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私はこう見えてもクラシック音楽が好きな人なのです。子どもの頃は人一倍外遊びをしていた腕白坊主でしたが、家でクラシックも聴いていたという変な少年でもありました。父が買ったステレオで、母が買ったレコードをこっそり聴いていた子どもでした。
カラヤン指揮のベルリンフィルのベートーベン「運命」、チャイコフスキー「白鳥の湖」。
フリッツライナー指揮のシカゴ交響楽団のドボルザーク「新世界より」が、お気に入りの3曲でした。この3曲は雰囲気で指揮も出来ます。あくまで雰囲気ですが(笑)

私の家のすぐそばに兵庫県立芸術文化センターがあります。
これは阪神大震災後に出来た復興のシンボルのようなホールで、知事が
指揮者・佐渡 裕に「劇場を中心に、この街を震災前よりもずっと優しく、
ずっと逞しい街にしてほしい」と依頼し、佐渡 裕が芸術監督に就任しま
した。世界中を飛び回っている佐渡さんなのに、その忙しい合間をぬって
市内の学校を回って音楽の楽しさを子どもたちに伝えてくれたのです。
私も近くの深津小で佐渡さんの活動を間近で見たのですが、その感動は
忘れることができません。
佐渡さんの指揮で楽団の音楽が鳴りだすと子どもたちの目が輝きます。
佐渡さんがリコーダーを吹くとみんなもリコーダーを吹きたくなります。
そして子どもたちにも指揮をさせてくれます。指揮台に立った子どもが
恐る恐る指揮棒を振ると楽団の音が鳴りだすのです。その時の子どもの
驚きと満足した様子は本当に素敵でした。
私はあっという間に、佐渡 裕の大ファンになりました。


いつものことですが、前置きが長くなりました。ホンマ長過ぎ!(笑)

佐渡 裕著・「棒を振る人生」(PHP文庫734円)を読みましたが
これはいいですねぇ〜。感動しました。
心に残る言葉がいっぱいありました。
これは人生論でもあるし、教育論でもあります。
授業づくりや学級づくりは、まさに佐渡さんの言う通りです。
社会ってこういうものだし、平和ってこういうことだと思いました。

佐渡さんは指揮科を出ていないので独学で指揮を学びました。
こんなくだりがあります。
「日本の指揮法は型から入ることが重要視される。型が教科書としてあるため、教えやすく、学びやすい。・・・中略・・・確かに指示が明確であれば、オーケストラは同時に音を発して、同時に終わることが出来るだろう。あるいは同じテンポで演奏できるだろう。大事なことではあるが、それは指揮の入口であって、音楽の喜びや豊かさはまったく違うところにあり、もっとずっと先にある。あえて言うならば、明確な指示が出来ない指揮者で、素晴らしい指揮者は山ほどいる」
カラヤンは言います。
「指揮者にとって、一番いけないのは明確な指示を与えることだ。なぜなら、それは奏者が互いの音を聴くという大切なことを妨げるからだ」

今、全国で流行っている「授業スタンダード」を進めようとしている教育
委員会や学校は、この佐渡さんやカラヤンの言葉をどう受け止めるので
しょうね。


佐渡 裕の師匠であるバーンスタインが言います。
「ジョージのチェロの音、マイケルのホルンの音、その人にしか出せない音があり、その『名前のついた音』を大切にして音楽をつくっていくんだ」

佐渡さんも同じことを「一万人の第九」(大阪城ホール)で語っています。
「最初はみんな『私一人くらい歌わなくても大丈夫だろう』という気持ちで参加する。しかしそれでは苦労して1万人でやる意味がない。『ガラガラ声もキンキン声も全部受け入れるから、一人ひとりが主人公になってほしい』と訴えてきた。
合唱の歌い出しは『Deine Zauber』。直訳すれば『神の不思議な力』。『その不思議な力によって、すべての人は兄弟になる』・・・『この不思議な力』を僕は『一人ひとりが与えられている力』と理解するようになった。それは特別な力ではなく、優しさや明るさ、たくましさ、子どもたちの純粋な笑顔も一つの力だ。
この1万人は、ただ声を合わせるだけに集まったわけではない。もちろんみんなで必死になって声を合わせることには力を尽くす。しかし本当に大切なことは、小さな子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまでが一緒になって音楽をつくるということだ。性格も年齢も生育も仕事も環境も国もみんな違う人が、一緒にここで生きているということだ。
7歳の男の子も70歳のおじいちゃんもみんなが同級生のようになって、自由に、誇らしげに歌っている姿を、ベートーベンはきっと夢見ていたに違いない」


次の文章を「学級」「学級目標」「自尊感情」「幸せ」等に
置き換えてみると、まさに「学級づくり」「授業づくり」になります。
そしてこれが世界平和の考え方だと思います。
「オーケストラは集団で響きをつくる。そのためには互いの音を聴き合わなければならない。音楽が一つの世界をつくるためには、みんなの心が一つの方向に向かう必要がある。でもだからといって、何かを抑圧したり押し付けるのは僕のやり方ではない。生まれも環境も考え方もまったく違う人間がいることを認め合い、それぞれの個性を生かしながら、互いに鳴らす音に耳を傾けて一つの音を奏でる。互いの音と思いが重なった時、心が震え合い、ほかのどこにもない音色が生まれる。そんなふうにして、ぎくしゃくしていたメンバーは音楽を通して一つになり、一緒に喜びを分かち合うことができる。あるいは自分が自分らしく演奏できる。その達成感はとても大きい。だから心を合わせようという思いを抱くこと、それを求めること自体はとても大事なのだ。」


あぁ長々と書いてしまいました。
すみませんどうも。
でもぜひ読んでほしい1冊です。


ところで、
私はこの本を読んで、あることに気づいたのです。
佐渡 裕の師匠は、巨匠「バーンスタイン」です。
その「バーンスタイン」の師匠は「フリッツライナー」と書いてありました。
えっフリッツライナー?
そう、私が子どもの頃、よく聴いていた「フリッツライナー」です。
我が家に一番たくさんあったクラシックレコードの指揮者です。

わぁ〜〜私と佐渡さんは、遠くでつながっていたのです(笑)



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Posted by naka602 at 10:28 | TrackBack (0)
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