ロンドン金属取引所(LME)が自前の清算機関の設立を検討 LCH.Clearnetはさらに苦境へ
ロンドン金属取引所(LME:London Metal Exchange)では、5月3日に、自前の清算機関の設立を検討していることを明らかにした。
LMEでは、1987年からLCH.Clearnetを清算機関として利用しており、この計画が実現すると、LCH.Clearnetにとっては、二〇年以上にわたって続いてきたこの清算ビジネスを失うことになる。
LMEでは、自己清算(self-clearing)への移行について、「可能性を真剣に検討している」(giving serious consideration)としている一方、最終的な決定については、とくに期限を設けていないとしている。
こうしたLCH.Clearnet離れの動きは、実は、これが初めてではない。
まず、NYSE Liffe(ロンドン国際金融先物取引所)では、傘下に「NYSE Liffe Clearing」を設立しており、2009年7月から、すべてのデリバティブ取引の清算業務を自前で行っている。ただし、リスク管理や決済の保証(guarantee)などの機能については、LCH.Clearnetに委託しており、両方の清算機関のサービスが組み合わされた形となっている。
次に、NYSE Euronextでも、2010年5月に「欧州清算戦略」(European Clearing Strategy)を公表し、2012年後半に、ロンドンとパリに、2つの清算機関を設立する計画を明らかにしている。
この計画では、ロンドンに設立する清算機関が、金利、商品、FXに関するデリバティブ商品のクリアリングを、パリに設立する清算機関が、株式現物と株式デリバティブのクリアリングを行う予定である。
これまでの欧州の証券決済インフラの統合には、「垂直型統合」と「水平型統合」があった。垂直型は、証券取引所が、清算機関(CCP)や証券決済機関(CSD)を所有するかたちで、取引から決済までのプロセスを縦に統合することを指す。一方、取引所は取引所同士で、CCPはCCP同士でといった形で、同じ機能を果たす機関同士が統合を進めるアプローチを水平型統合と呼ぶ。
従来は、ドイツのほか、イタリア、スペインなどが垂直型をとっていたが、これはむしろ例外で、EuronextやLSE(ロンドン証券取引所)などの主要市場では、水平型のアプローチがとられてきた。
しかし、LSEでも自己清算を検討していることが伝えられており、ここにきて、水平型の旗色が悪くなっているようである。このように、取引所が続々と清算業務に乗り出しているのは、清算業務の収益性が高いためである。取引所取引については、既存の証券取引所のほかに、MTF(多角的取引機関)といった新たな参入もあり、価格競争により収益が上げにくくなっている。こうした中で、各取引所では、収益の確保を目指して、CCP業務を取り込もうとしているのである。すでに、こうしたビジネスモデルをとっているドイツ取引所では、クリアリング業務がグループの収益に大きく貢献しているものとされているし、自己清算の発表においても、「収益に貢献する」(LME)、「株主にとってもプラスである」(NYSE Euronext)といったことを理由として挙げている。
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