第四章
その他の新・再発見と新仮説

先祖と親について

 「開拓誌」には先祖と親に関する記述はない。朝倉義景の家臣福岡氏が先祖であることは昭和四十六年(一九七一年)福岡清氏著「福岡新兵衛歴史のあらまし」からの引用である。しかし初代の福岡新兵衛が砂畑村を開拓したことは記述されているが弟が初代新左衛門であったとは記述されていない。福岡家五つの分家(隠居を含む)の最後に「福岡新左衛門」が紹介されており、「福岡新左衛門は水落区国道筋東側に分家したると聞く、後坂井郡三国木場辺を埋立てここに移住し」と記述されているだけである。

 新兵衛と同じ「新」の文字のある分家は新左衛門家だけであり、これが末尾に記されていることから新兵衛の子の系統ではないということから、新左衛門家は弟が分家したものと推理した。なお、兄弟で砂畑村にやってきたことは同書に記されている。そして年齢を考慮すると二代目新左衛門が改姓し砂村新左衛門と称したとするのが最も妥当であろうと推理したのである。

なお、福岡清氏は今も鯖江市に残る福岡新兵衛家の先代当主であり、「福岡新兵衛歴史のあらまし」はその手記である。私が鯖江市を訪問したとき、鯖江市文化の館に所蔵されている写しを閲覧させていただいたもので、一部の関係者にしか知られていない文書である。しかし手記は先祖の言い伝えと直近に得た外部情報に基づくものと思われ、どの程度確かな根拠があるのかは不明である。

 「開拓誌」において出身地は越前砂畑村であるとされている。砂畑村は後に新村となり、今は鯖江市の新町であることが説明されている。以前は【新編相模国風土記稿】における「万治年中砂村新左衛門という者、摂州大坂上福島の人、官許を得て開墾す」という記述を元に大阪の出身であるとされていた。しかし昭和四十八年(一九七三年)頃、福井藩の【片聾記】の記述に「新左衛門は越前砂畑村の者にて」とあることを横須賀市の山内和子氏とその叔父鯖江市の高橋亮三氏が発見したことによって、福井県鯖江市の出身であると訂正されたのである。

 前述【砂村新田内割絵図】、【遺訓】の詳細以外に、今までの論文や書物に書かれていなかったこと、一部の著作に紹介されるのみで広く知られていなかったことについて、以下に説明する。第一章の記述と重複する部分も多くなるが、第一章の記述の根拠の有無に言及しながら説明することを試みる。

 これまで新左衛門および内川新田について最も系統的にまとめられたのは平成四年(一九九二年)発行の久里浜地域文化振興懇話会編 久里浜文化叢書第六集 「内川新田開拓誌」(以下、「開拓誌」)である。本書は石渡正氏が中心となってまとめられたものである。以下の記述は、主に同書には触れられていない、または間違っているのではないかと思われる史実に関するものである。なお「開拓誌」は昭和二十三年(一九四八年)に横須賀市史編纂の一環としてまとめられた、横須賀土木史「横須賀市域内新田開発史」における赤星直忠氏の記述を土台にしている。近代の横須賀において内川新田ないしは砂村新左衛門についてまとまった研究がなされたのはこの二度しかない。

 以下の記述はあくまでも「これまでの仮説より確度が高い」と主張しているものであり、これまでの仮説を完全否定しているものではないので留意されたい。

生地について

 砂畑ないしは新村の出身であるとして問題はないが、私は若干修正して新村近くの「水落」出身とした。「福岡新兵衛歴史のあらまし」に分家の新左衛門家は水落にあったとされるからである。水落に住んで新村の開墾に従事していたのなら、どちらでも構わないだろうし、昔から砂畑出身のほうが通りやすかったとも言える。

生年について

 「開拓誌」には生年の記述はない。慶長六年(一六〇一年)という生年については久里浜天神社に残る【遺訓】の写し、【砂村先祖伝書】の記述によった。その文化十一年(一八一四年)の【遺訓】の写しの中には、他の【遺訓】またはその写しにはない年齢の記述がある。寛文六年(一六六六年)における記述で六十六歳としているので逆算すると慶長六年(一六〇一年)の生まれということになる。この記述の信憑性を証明することはできないが否定材料はない。そのほかに生年や年齢に関する記録は残っていない。

 砂畑村開拓後の検地が慶長三年(一五九八年)であり、新左衛門が新兵衛の弟初代新左衛門の長子であるならば、この前後に誕生していて矛盾はないので、慶長六年(一六〇一年)に生まれて、寛文七年(一六六七年)に満六十六歳で死んだとしてもよかろう。

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目次 
第五章 
第四章 
第三章 
第二章 
第一章 
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あとがき 
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