中島 真志のホームページ  Nakajiparkへようこそ

トップページ

決済システム・ニュース

著書(My Books)

論文(Selected Papers)

略歴(My Profile)

決済関係リンク(My Links)








決済システム・ニュース
過去のニュース
2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
☆ご意見・ご感想は、smileアットマークnakajipark.comまで。
           (アットマークを@に変えてください))


資金決済システム関連

証券決済システム関連
電子マネー関連
:デリバティブ関連


2015年12月

T2Sへの移行計画が再変更

 ECBでは、20151210日のCSD運営委員会(CSD Steering Group)で、T2Sへの移行計画を修正することを決めた。

 主な修正点は、①ユーロクリア・グループの移行が半年遅れとなること(20163月→20169月)、②クリアストリームの移行が半年遅れとなること(20169月→20172月)、③新たに第5陣(20179月)が設けられること(イベルクリア、ユーロクリア・フィンランドの2つ)、などである。 

 今回の移行計画の修正は、ユーロクリア・グループの移行作業の遅れに伴うものとされている。本修正計画は、20162月のECB理事会(Governing Council)で最終的に決定される。 

 T2Sへの移行は、20156月の第1陣の移行が無事に終了したところであった(モンテ・ティトリのみが8月末までずれ込み)。  

<移行時期が変更されるCSD

移行時期の変更

対象となるCSD

20163月→20169

ユーロクリア・ベルギー(ベルギー)

ユーロクリア・フランス(フランス)

ユーロクリア・オランダ(オランダ)

20169月→20172

クリアストリーム・バンキング(ドイツ)

OeKB(オーストリア)

KELER(ハンガリー)

20172月→20179

イベルクリア(スペイン)

ユーロクリア・フィンランド(フィンランド)

    

<新たな移行計画>

                 -シャドーは移行時期が変更されたCSD

移行時期

CSD

の数

対象CSD

1

20156月)

 

5

BOGS(ギリシャ)

モンテ・ティトリ(イタリア)

マルタ証券取引所(マルタ)

ルーマニアCSD(ルーマニア)

SIX SIS(スイス)

2

20163月)

2

NBB-SSS(ベルギー)

インターボルサ(ポルトガル)

3

20169月)

 

6

ユーロクリア・ベルギー(ベルギー)

ユーロクリア・フランス(フランス)

ユーロクリア・オランダ(オランダ)

VPセキュリティーズ(デンマーク)

VPルクス(ルクセンブルク)

ルクスCSD(ルクセンブルク)

4

20172月)

 

 

 

 

7

クリアストリーム・バンキング(ドイツ)

OeKB(オーストリア)

KELER(ハンガリー)

CDCP(スロバキア)

EVK(エストニア)

LCVPD(リトアニア)

KDD(スロベニア)

5

20179月)

2

イベルクリア(スペイン)

ユーロクリア・フィンランド(フィンランド)

 

 

2015年6月



EU6つのACHが欧州決済組合(ECC)を設立

 EACHA(欧州ACH協会)に参加する6つのACHでは、623日に、新会社「欧州決済組合」(ECCEuropean Clearing Cooperative)を設立した。

 ECCは、共通プラットフォームを構築することにより、SEPA(単一ユーロ決済圏)において、ACH間でクロスボーダー送金を効率的に処理することを目指している。

 この共通プラットフォームは、2015年末までに稼働を開始する予定であり、EACHAの作成したクロスボーダー・リンクの技術的なフレームワークに基づいて構築される。ACH間の資金決済については、マルチ・サイクル(複数の決済時点)のモデルを採用し、ネットポジションの決済をTARGET2で行う形で導入される。

 今回、ECCに参加したACHは、Equens(オランダ)、ICBPI(イタリア)、Iberpay(スペイン)、DIAS(ギリシャ)、KIR(ポーランド)、TRANSFOND(ルーマニア)の6つである。ただし、ECCへの参加は、欧州のすべてのACHにオープンであるものとされており、追加参加も可能である。

 従来、EACHAでは、2つのACHが相互にリンクを結ぶという「バイラテラル・モデル」のリンク構想を進めていたが、今回、これを共通プラットフォームによって複数のACHをリンクするという「マルチラテラル・モデル」に転換したものである。

 このマルチラテラル・モデルは、図1のような形で機能し、国内送金については、引き続き各国のACHが取扱う一方で、クロスボーダー送金については、共通プラットフォームを通じて、送金側と受取側の2つのACHが送金メッセージを処理する形となる。そして、ACH間の受払いの差額の決済は、TARGET2において行われる。 

 今回のECCの位置付けについては、以下のようにみることができる。

SEPAへの移行が20148月に完了した。これにより、ユーロ圏のすべてのACHの使う送金メッセージがISO20022ベースの「SEPAフォーマット」に統一された。つまり、各国のACHが「共通言語」によって会話することが可能となった。これを受けて、ユーロ圏のACHの統合が進むものとみられていたが、今回のECC設立の動きがその第1弾となる。

②汎欧州のACHPEACHと呼ばれる)を目指す動きとしては、EBAの「STEP2」があり、すでに16ACHとリンクを構築し、4,700以上の金融機関のアクセスを可能としており、これまでのところ、ユーロ送金のクロスボーダー決済では先頭を走っている。今後は、ユーロ圏の小口決済において、STEP2ECC構想のどちらが主導権を握っていくかが注目される。

③今回のECC構想には、最大の決済件数を有するフランスの「STET」が参加していない(STETは、ベルギーの決済を受託するなど、独自の拡大路線をとっている)。また、ユーロ圏には、20以上のACHが存在する(因みに、EACHAの参加メンバーは26ACHである)が、今回は、このうち、6つのACHが参加したに過ぎず、ECCは、またユーロ圏全域の動きには至っているとは言えない。

 ④今回の参加メンバーをみると、Equensが最大の決済量・影響力をもっており、これが中小国のACHを巻き込んでマルチのリンクを構築しようとしているものとみることができる。これに対して、他のACHがどのように対応してくのかが注目される。 

1 ECCの機能