胃潰瘍の原因はピロリ菌?
日本は、世界でも有数の長寿国ですが、「胃腸病が多い国」としても知られています。
中でも胃炎や消化性潰瘍(胃潰瘍と十二指腸潰瘍を総称したもの)の患者は多く、大変身近な病気です。
消化性潰瘍は、胃液の攻撃力と粘膜などの防御力のバランスが崩れ、自らが自らを傷つけることで生じます。
従来は、そのバランスを崩す大きな要因はストレスだと言われてきました。
しかし、1980年代に人間の胃の中に棲むある細菌が発見され、その後の研究でこれが胃炎や消化性潰瘍と密接な関係があることが明らかになってきたのです。
その細菌の名前は「ヘリコバクター・ピロリ菌」(以下ピロリ菌)です。
●ピロリ菌はなぜ胃の中で生きていけるのか?
ピロリ菌が強い酸性である胃の中で生き延びることができる秘密は、ピロリ菌がウレアーゼという酵素を持っている点にあります。
ウレアーゼとは、尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する酵素です。
ピロリ菌はこのウレアーゼによって胃の粘膜の中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解しているのです。
アンモニアはアルカリ性ですので、アンモニアが発生すると周りの酸は中和されます。
ピロリ菌はアンモニアをせっせと作ってバリアのように自分の周囲にめぐらせて、周りの酸を弱めています。
つまり、自分が生存できる環境を自分で作り出しているのです。
●ピロリ菌はこうして胃の粘膜を傷つける!
ピロリ菌が尿素を分解したときに作られるアンモニアの刺激は、胃粘膜の粘膜細胞を直接的にただれさせます。
アンモニアの害はそれだけではありません。
アンモニアは細胞内のミトコンドリアの呼吸を邪魔します。
その結果、粘膜下の血流が悪くなり、粘膜の防御力が弱まってしまいます。
現在までの研究で、ピロリ菌の持続感染により慢性胃炎が起こることが確実視されています。
また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発や治りにくいことにかかわっていることも明らかにされています。
しかし、ピロリ菌に感染した人がすべて消化性潰瘍になる訳ではありません。
それに、ストレスが消化性潰瘍の大きな要因であることには変わりはありません。
ですから、規則正しい生活を送り、栄養バランスのとれた食事をとって、健康な胃腸を保ち、ピロリ菌から大切な胃腸を守りましょう!
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